それゆけ、フェルディナント号

この絵本も幼稚園の頃の息子のお気に入りの一冊。日本でもたいへん人気のあるドイツの絵本作家、ヤーノシュによる「それゆけ、フェルディナント号」(ヤーノシュ・作、つつみなみこ・訳、徳間書店)だ。寝る前によく読み聞かせをした就寝の友であり、私も大好きな絵本だ。本書は、『フェルディナント号のやまのぼり』(原題は“Das auto hier heist Ferdinand”)と『フェルディナント号はちからもち』(原題は“Das starke auto Ferdinand”)の2つのお話で構成されたお得版。表紙の絵は、『フェルディナント号はちからもち』の方のオリジナル表紙を使用している。

ゆかいなフェルドナントさん
ゆかいなフェルドナントさん

この絵本はなかなかイケている。まず、粋な黄色のクラシカルオープンカー、フェルディナント号に乗って登場する主人公のフェルドナントさんがかなり個性的。特徴的な口髭、赤い洋服に赤いマフラーなんて洒落っ気たっぷり。ちょっと小粋に口髭をカールさせているものの、ボサボサ頭と相まって、とぼけた顔がなんともいえない。

「フェルディナント号のやまのぼり」から
「フェルディナント号のやまのぼり」から

『フェルディナント号のやまのぼり』は、フェルディナント号をみんなから押してもらうお話。「これから このやまに のぼって みせるぞ!」と大はりきりのフェルディナントさん。でも見るからにパワー不足の感があるフェルディナント号ではうまく登れない。そこへタクシーがやってきてフェルディナント号をぐいっと押してくれる。でも頂上まではまだまだだ。次にゆうびんやさんのトラックがやってきて、前の2台を押してくれる。今度やってきたのは7人乗りのしょうぼうじどうしゃ。3台まとめてぐいぐい押した。山のてっぺんまではあと一息。そこへノルテさんのトラクターがやってきて、最後の一押し。すると、先頭のフェルディナント号は頂上の崖から湖にざぶーん…。黒い顔になって目が点状態で固まっているフェルディナントさんの表情が最高。

“Das starke auto Ferdinand”から
”Das starke auto Ferdinand”から

『フェルディナント号はちからもち』は、反対にフェルディナント号がみんなを引っぱるお話。「ぼくの くるまは ちからもち。だれにも まけない くるまだよ!」と自信たっぷりのフェルディナントさん。近くの川に落っこちたトラクターをロープで引っぱり上げた。そこへ荷物をたくさん積んでアメリカに行く途中の、老夫婦が乗った白いくるまにもロープをつなげて2台を引っぱる。さらに、モーモー牛の引く荷車にもロープをつないで3台を引っぱった。自転車に乗ったいたずらっ子のフローリアンもこっそり後尾につかまった。すると、太いロープがぷつんと切れて、みんな大空に舞い上がる。最後にフェルディナントさん、自信満々にこう嘯く。「ほんとはね…ロープが切れなかったら、世界をまるごと 引っぱれたのさ!」

「フェルディナント号はちからもち」から
「フェルディナント号はちからもち」から

このヤーノシュ独特のナンセンスな笑いは、子供たちにも大うけ。ストーリーもさることながら、力強いタッチの挿絵も、読者を元気づけてくれるようなパワーがある。『やまのぼり』でくるまを押すときの「ぐぐ ぐいぐいっ」という擬態語はゆっくりと力を込めて、『ちからもち』でくるまを引っぱるときの「はいや、やー」というフェルディナントさんのへんてこりんな掛け声は威勢よく大声で読み聞かせをすると、また一段と魅力的なお話になると思う。

Janosch
Janosch

作者のヤーノシュ(Janosch、ヤノッシュとの表記もあり)、本名はホルスト・エッケルト(Horst Eckert)。1931年3月11日、現ポーランドにある工業都市ツァボルツェ(昔のドイツ、ヒンデンブルク)に生まれる。1944年から53年まで鍛冶屋や工場で働く。ミュンヘンの美術大学で絵を学ぼうとするが挫折。その後、画家、詩人、子どもの本の作家として活躍。1950年代はパリとミュンヘンで過ごし、現在は、カナリア諸島で海と太陽を満喫しながら暮らしている。ドイツでは、200冊以上の本を出版、絵本の登場人物がキャラクター商品化されるほどの人気の作家。著書に『ぼくがげんきにしてあげる』『ぼくがおうちでまっていたのに』(徳間書店)、『おばけリンゴ』(福音館書店)、『ぼくはおおきなくまなんだ』(文化出版局)などがある。『夢みるパナマ きみのパナマを探しにいこう』(きんのくわがた社)でドイツ青年書籍賞受賞、小説に授与されるアンドレアス グリュフィウス賞などの受賞歴もある。

訳者の堤那美子さんは、1971年生まれ。2001年上智大学大学院文学研究科ドイツ文学専攻博士後期過程修了。大学・短大等でドイツ語を教えるかたわら、絵本の研究、翻訳に意欲を燃やしている。

Das auto hier heist Ferdinand Das starke auto Ferdinand
(左)"Das auto hier heist Ferdinand"(右)"Das starke auto Ferdinand"

フェルディナント号にモデルがあるかどうかはわからないけれど、ドイツ語圏でじどうしゃにフェルディナントとくれば、ポルシェ博士を思い出さないわけがない。『やまのぼり』の初版1963年といえば、名車中の名車ポルシェ911の初代モデル、901が誕生したエポックメイキングな年[1]。この意味ありげなタイトルを冠した絵本は、ポルシェ博士とポルシェの夢見たクルマたちへ捧ぐオマージュではないかと思えてしまうのは私だけであろうか。クルマの絵本にはまってからは、ちょっと偏った想像力が働いてしまう。

[引用・参考]
[1]ポルシェ911、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%BB911
[2]ヤーノシュ、リンデホフ、
http://www17.ocn.ne.jp/~linden/ehon6.html

それゆけ、フェルディナント号それゆけ、フェルディナント号
(2004/05/18)
ヤーノシュ

商品詳細を見る
スポンサーサイト


コメント

    コメントの投稿

    (コメントの編集・削除時に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)


    トラックバック

    Trackback URL
    Trackbacks


    最近の記事