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楽しいクルマ絵本の世界/エンスーのためのクルマ絵本ライブラリー

トヨタのリコール問題  

米議会公聴会で宣誓する豊田社長

トヨタがリコール問題で創業以来最大の危機に直面している。そのトヨタ自動車の実質的な創業者、豊田喜一郎(彼は正式には2代目社長、初代社長は義兄(*)である豊田利三郎)の伝記絵本(というよりは劇画本)を紹介し、トヨタの原点を振返ってみようと思うのだが、その前に、やはりこのリコール問題に触れないわけにはいくまい[1]。

(*)利三郎は、喜一郎の腹違いの妹愛子の夫(婿養子)なのであるが、年齢は喜一郎よりも上。戦前の民法では、同一戸籍内にある者は年長者をもって兄とすると定められていた[2]。

レクサスES350
レクサスES350

事の経緯を整理してみる。昨年8月、米カリフォルニア州で発生した交通事故が事の発端である。レクサス「ES350」が暴走し、4人が死亡。当初はアクセルペダルがフロアマットに引っかかったことが原因と見られていた。トヨタは、9月に「カムリ」「プリウス」など約380万台で事故につながる恐れがあると米国で発表した。一方、10月に道路・自動車行政の安全全般について監督する米高速道路交通安全局(NHTSA)は、フロアマットではなくペダル形状に問題の可能性があることを指摘する。

にも関わらず、11月2日の米トヨタ自動車販売のプレスリリースでは、『原因はフロアマットの誤装着であり、NHTSAが「過去の調査で車両には欠陥がない」とする報告書をまとめた。(“NHTSA also confirms that no defect exists in vehicles” )』と発表した。この発表がトヨタの致命的なミスとなる。これに対して当局は4日、トヨタの発表は『不正確で誤解を招く(”inaccurate and misleading information put out by Toyota”)」』との公式プレスを出した。報道官によれば、問題はフロアマットだけでなく、アクセルペダルや床板の形状も含めて調査中であり、この問題が終わっていないとの厳しい口調で反論したのである[3]。その後の25日に、トヨタは米国で8車種426万台を対象にペダルを無償交換するなど自主改修措置を発表した。

NHTSAのある米国運輸省(DOT)オフィス
NHTSAのある米国運輸省(DOT)オフィス

自動車業界にとって泣く子も黙るNHTSA(ニッツァと呼ばれる)の承諾も得ずに、問題は解決しましたと公表してしまったのである。用意周到なトヨタにしては、考えられないような基本的なミスだ。その後の調査で、構造的にアクセルがちゃんと戻らない、ペダルそのものの設計にも不具合があったことが判明[4]。米国で販売した小型車「カローラ」やSUV「RAV4」など約230万台のリコールに追い込まれた。その後この問題は欧州・中国にも飛び火、トヨタの孝行娘、プリウスのブレーキング制御の不具合問題にまで話が広がってしまった。(Ford社も、ちゃっかりとハイブリッド車の回生ブレーキのソフトウエアを書き換えてますね[5])

また、2月17日の東京本社会見で、米議会の公聴会に豊田社長が出席しない意向を示したことも火に油を注いでしまった[6]。経営トップが、事の重大さに気づいていなかった証左である。人のよさそうな新米社長、部下たちとのコミュニケーションが取れていないのかなあ。(公聴会後の社員の前で見せた社長の涙もいただけない。山一證券でもあるまいし、リーダーはいかなる場合も涙を見せてはいけない。)

これら一連の対応のまずさが米国の不信を買うはめとなり、公聴会への社長召喚にまで事が及んだ訳である。私も国家プロジェクトに参画した経験もあるのでわかるのだが、当局に一旦不信の念を抱かさせると、全ての事象に疑いを持たれる。公聴会でも執拗に「電子制御にも不具合があるのでは?」と嫌疑をかけられているのはそのためであろう。

公聴会、涙の証言
公聴会、涙の証言

確かに、公聴会初日での被害女性による涙の証言には、客観性を欠く政治的ショーの感も拭えず、非常に不愉快に思ったのは私だけであるまい。普天間問題の報復という意見もあるが、私は直接的な影響は与えていないとみる。むしろビックスリーの凋落が、心理的に少なからず影響していると見るほうが妥当である。トヨタが日本ブランドの象徴とするならば、GM、フォード、クライスラーのデトロイトブランドはアメリカの古き良き強き時代の象徴である。それらシンボルの破綻を尻目にトップに上り詰めたのが、かつての敵国、日本の企業となれば心情おだやかではないはずだ。勿論、ビックスリーの凋落は、自らが巻いた種なので日本企業が恨まれる筋合いはない。けれども、日本市場でトヨタやホンダに変わって現代自動車やVWがシェアNo.1を取ったら、日本人はどう思うであろうか。決して外国差別ではないのだけれど、良い商品が売れるのは当然なのだけれども、冷静に考えて日本人の中に嫉妬心が芽生えるのは間違いない。

他人の土地で金儲けをする以上、相手側にこのような感情が生まれるのは至極当然のことだ。なので、外国で商売するためには、自国以上に細心の注意を払う必要がある。「なぜなぜ5回」のトヨタ式カイゼンは有名である。「なぜ」を繰り返すことで、問題が起きた要因の本質を突き詰める。これが創業者、豊田喜一郎より受け継がれた「品質のトヨタ」のDNAである。そのトヨタウェイに従って、昨年8月の事故分析を行っていたら、アクセルぺダルの設計不具合に至っていたはずであり、11月2日の致命的な発表にならなかったはずだ。やはり、世界一となったトヨタマンの慢心、利益優先、消費者軽視の驕りがあったのかもしれない。自分も含めて全ての製造業に携わる人は他山の石として、冷静に今回の事例を分析する必要があると思う。

日産のゴ-ン社長は、今回のリコール問題が米国販売に与える影響は少ないとコメントしているが[7]、良きにつけ悪しきにつけ、トヨタは日本ブランドを背負っている。トヨタへの不信感は、自動車のみならず日本製品全体への不信感につながる危険性を秘めている。ジャパンバッシングに繋がらないように米国の冷静な対応を期待したいが、トヨタの今後の対応如何であろう。消費者目線で誠実に対応すること、情報をきちんと公開すること、これが基本だ。トヨタにここで踏ん張ってもわらないと、日本経済全体が沈没しかねないのだ。

国が生まれ変わると期待していた民主党政権でも、政治倫理の問題、行政改革の問題、景気の問題は停滞したままである。オリンピックもパッとしない、サッカーワールドカップも暗雲立ち込めている。ナショナルフラッグ、日航は破綻する。そこへ来て、日本経済を牽引していたトヨタのリコール問題である。このような日本全体が自信喪失に陥っているときこそ、そのトヨタの礎を築いた一人の日本人の伝記を通じて、日本経済が光輝きだした頃の原点に立ち返るべきであろう。

次回は、豊田喜一郎に関する2冊のクルマ絵本(コミック本)の紹介を通して、彼の生涯とトヨタの歴史を勉強してみたいと思う。

[参考・引用]
[1]豊田章男社長、最大の危機、細田孝宏、2010年2月8日、日経ビジネスONLINE、
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20100204/212520/
[2]劇画トヨタ喜一郎(復刻版)、木本正次・作、影丸譲也・画、産業技術記念館、p11、1994
[3]レクサス暴走事故:トヨタの巧妙なミスリードに米当局が真っ向から反論、2009年11月6日、[の]のまのしわざ、http://nomano.shiwaza.com/tnoma/blog/archives/007154.html
[4]トヨタ、2回あったアクセルペダルの不具合、林 達彦、2010年2月22日、Tech-On!、
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20100222/180501/
[5]Ford社、ハイブリッド車の回生ブレーキのソフトウエアを書き換え、小川計介、2010年2月8日、Tech-On!、http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20100208/180031/
[6]トヨタ社長、公聴会欠席に批判噴出 説明不足で不信増幅も、2010年2月18日、産経ニュース、http://sankei.jp.msn.com/economy/business/100218/biz1002181905025-n1.htm
[7]「米国販売への影響はない」日産ゴーン社長がトヨタを援護、2010年2月24日、産経ニュース、http://sankei.jp.msn.com/economy/business/100224/biz1002241833035-n1.htm
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Posted on 2010/02/27 Sat. 21:18 [edit]

category: cars/車のお勉強

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コメント

この車160㌔しか出ないの?

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2010/02/27 23:24 | edit

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