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楽しいクルマ絵本の世界/エンスーのためのクルマ絵本ライブラリー

トラ トラ トラクター  

トラ トラ トラクター2

「トラトラトラ、ワレ奇襲ニ成功セリ」かと思ったが、「トラ トラ トラクター」(小風さち・文、関根立巳・絵、福音館書店ちいさなかがくのとも通巻95号)は、昨年末に発売されたクルマの絵本。「とらたのトラック」に続いて寅年特集(もう、2月やん)といきたい。

トラクター
トラクター(「トラ トラ トラクター」より)

トラクターと聞くと、一般的には農業用トラクターを思い浮かべるが、本来のトラクター(tractor)は、それ自体で推進できないものを牽引したり、しばしば動力を供給したりする装置、すなわち被牽引車を引っ張る牽引車のことを指す。今回の主人公はトラクタートラックのことで、貨物輸送のための長いトレーラーを、長距離にわたって牽引出来るように設計された車両のことだ。トレーラーヘッドとも呼ばれる[1]。

ストラルドキャリア
ストラルドキャリア(「トラ トラ トラクター」より)

舞台は、横浜、本牧埠頭あたりであろうか。「みなとまち運送会社」のトラクターの仕事の1日を描く。絵本の内容はかなりマニアックである。この世界は全く門外漢なので、トラクターが運搬する船から下ろされたコンテナを、トラクターの停車位置まで運ぶ大型の働く車、ストラルドキャリアの存在は全く知らなかったし(コンテナ貨物の運搬方式はここで非常にわかりやすく説明されている)、特に、トラクターの後部に連結され、そのコンテナを固定運搬する台車(シャーシ)、すなわち巨大な荷台が縦置きに車庫にずらりと並んだ光景は、驚愕であり新鮮でもある(確かに場所をとらない効率的な保管方法である)。

立て掛け式駐車設備でのフォークリフト
立て掛け式駐車設備でのフォークリフト(「トラ トラ トラクター」より)

調べてみると、この台車の「立て掛け式」駐車設備は、実際に横浜に存在する。本牧埠頭にある横浜シャーシターミナル協同組合(YCT)が所有・管理するものである。YCTは、海上コンテナ輸送用トレーラー(シャーシ)の集中管理運営によるコスト削減、トレーラーの共同使用による運用効率化を図る等の目的に賛同した海上コンテナ輸送専門業者10社により設立された全国でも珍しい事業組合である。組合が管理運営しているこのユニークな駐車場は日本最初の設備なのだそうだ[2][3]。

立て掛け式駐車設備@横浜シャーシターミナル協同組合
立て掛け式駐車設備@横浜シャーシターミナル協同組合[3]

組合ではシャーシを約700台も保有し、大きなもので40フィート(約12m)もあるので、平地に置けば、1 台当たりの車庫は約38㎡必要となる。この「立て掛け式」を採用することにより、スペースは1/10になり、埠頭の駐車場不足の解消や経費の削減に大きな効果を上げている[3]。本書の挿絵どおりに、シャーシが縦置きに整然と並べられている姿は実に壮観で、横浜埠頭は家からもそう遠くはないので、是非一度、実物を間近で見てみたいものだ。

作者の小風さち氏は、1955年東京に生まれる。白百合女子大学仏文科を卒業。1977年からロンドン郊外で十年間暮らす。著書に『ゆびぬき小路の秘密』、絵本に『トーマスのもくば』『とべ! ちいさいプロペラき』『ちいさいときは なんだった?』など。長編童話『ゆびぬき小路の秘密』(以上福音館書店)で94年に野間児童文芸新人賞受賞。父は、児童文学者でもあり、福音館書店社長・会長を務め、現在は財団法人 大阪国際児童文学館理事長の松居直氏。

作画の関根立巳氏は、川崎市出身。1979年、日本デザイナー学院グラフィックデザイン科修了。1987年、三菱自動車エンジニアリング株式会社退社後(どおりで、トラックの描き方は非常にリアリティがある。出身からして、三菱ふそうのトラクターがモデルかと思ったが、車種は特定できず。)、野口佐武郎氏主宰のスタジオ・オブ・イラストレーターズでアメリカ仕込みのイラストレーションの基礎を学ぶ。1988年、フリーのイラストレーターとして活動開始。テクニカルイラストを中心にリアルからポップなイラストまで制作している。今回が初めての絵本の仕事となる。

本書の折り込みふろくを読んで勉強になったこと。トラクターは、別名のトレーラーヘッドを略して“ヘッド“、台車は業界用語で“ホネ”というらしい。その“ホネ”にコンテナが積まれると“のっかり”というのだそうだ。コンテナの重さは重いもので30t、空荷でも4~5tあるのだとか。重心が高くなる“のっかり”状態でのカーブ走行は、非常に注意を有する。あと面白いのは、“ホネつき”状態のトレーラートラックのバックの仕方。普通の乗用車の場合、右にバックで曲がりたいときは、ハンドルを右側に切る。ところが、ヘッドと台車が分割したトレーラー車両の場合は、事情が異なる。まずハンドルを左に切って、台車をヘッドで押し込みながらバックしないと台車は右に曲がらない。台車が右に曲がり始めたら、ハンドルを通常に右側に切る。最初にハンドルを右側に切ると、台車は左側に曲がってしまう。頭が混乱された方は、下記を参照されたし。
図説トレーラーバック:shimazakikan.com

[参考・引用]
[1]トラクター、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83%BC
[2]連帯による改革への挑戦 横浜シャーシターミナル協同組合、p6、IDEC YOKOHAMA、No.10、2000、
http://www.idec.or.jp/aboutus/organ/10_01.pdf
[3]横浜シャーシターミナル協同組合ホームページ、
http://yct-ida.jp/
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Posted on 2010/02/06 Sat. 22:47 [edit]

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