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楽しいクルマ絵本の世界/エンスーのためのクルマ絵本ライブラリー

100かいだてのいえ  

100かいだてのいえ

「100かいだてのいえ」(いわいとしお・作、偕成社)、いま我が家でブームの絵本である。主人公の男の子トチくんに、ある日、100階建ての家の最上階に住む住民から遊びに来てねと招待状が届く。森の中で、その巨大な建築物を見つけたトチくんは、1階から順番に階段を上っていくのだが、各階にはユニークな森の住民たちが楽しい生活を営んでいる。

「100かいだてのいえ」見開きはこんな感じ
「100かいだてのいえ」見開きはこんな感じ

絵本を縦に見開くと、10階分の建物の中が描かれていて、いわい氏の淡いパステル調のかわいらしい、しかも細かいところまで凝ったイラストが、てっぺんの100階まで1階1階丹念に描かれている。今まで、ありそうでなかった絵本企画、高層建築好きの私は、この発想が非常に気に入ったのであるが、うちの娘がこの絵本に完全にはまってしまった。

ちか100かいだてのいえ
ちか100かいだてのいえ

それはこの続編ともいえる昨年11月に発行された「ちか100かいだてのいえ」を購入してからのこと。主人公の女の子クウちゃんがお風呂に入っていると、なぞの生物から地下100階で開かれるパーティーに誘われる。今度は同じ手法で、パーティー会場の地下100階まで下って訪問をするというストーリー。地上100階のアイデアはまだ想定内だったものの、地下100階とは意表を突かれた。過去に紹介した「あかくんまちをはしる」や「ドライブにいこう」のクルマ絵本のように、(道に沿って)横方向にパノラミックに展開する絵本は珍しくないものの、上下へ展開していく絵本はあまり見たことがない。

「ちか100かい~」には、1枚の応募はがきが付いている。はがきには、壁と床だけの2階分の白紙の家が描かれていて、自分の住みたい家や、動物たちの住んでいる楽しい家を想像して描いて送ろうという企画。出版元の偕成社のホームページでは、送られてきた絵をつないで建てた「みんなの100かいだてのいえ」を見ることができる。娘も早速描いて応募した。日本全国各エリアに分かれていて、関東エリアは既に100階をはるかに越えて、1月8日現在、712階まで伸びている。本企画のサイトはこちらから。

我が家の100かいだてのいえ
我が家の100かいだてのいえ

娘は自宅でもはがきと同じようなテンプレートを何枚も準備。そこへ、好きな動物やキャラクターと室内を描いて、何階も重ねようとしだしたのである。妻や私にも何か描けという。私はこの冬休みに急かされてロボットの家を描いてみた。やってみると、なかなか思うように描けないものである。100階分を描くのって大変だなあ。こちらは、現在までに10枚、20階分を作成済み。

ブルジュ・ハリファ
ブルジュ・ハリファ

絵本は100階建てであるが、現実の世界はもっと進んでいる。ちょうど仕事始めの4日に、世界一の超高層ビルの落成式が、「ドバイ・ショック」の震源地、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで行われた。正式名称はUAEのハリファ大統領の名を冠した「ブルジュ(アラビア語でタワーの意味)・ハリファ」。公表された高さはなんと828m。これまで世界一だった台湾の「台北101」(508m)を大きく上回り、建設中の「東京スカイツリー」(634m)よりも高い[1]。ドバイではさらに1,000m以上の超々高層ビル建設の計画[2]もあるが、ドバイショックの影響もあり工事は一時中断。しばらくこの記録は破られることはないであろう。それにしても、前回の記事で速さ世界一は米英の一騎打ちであったが、超高層建築の世界一競争はアジアが主戦場なのは面白い。さて問題の階数は驚異の168階。ちなみに「台北101」の方は、絵本とほぼ同じの101階だてで[3]、日本一の横浜ランドマークタワーは70階だて、296mである。800m超のてっぺんとはいったいどんな世界なのだろう。

宇宙エレベーターのイメージ
宇宙エレベーターのイメージ

「ブルジュ・ハリファ」は、まさにバベルの塔のごとく、宇宙に届かんとする高さであるが、実は本当に宇宙まで届くような建築物構想も世の中にはある。それは「宇宙エレベーター(軌道エレベーター)」というもの。宇宙(軌道)エレベーターは、地上から静止軌道(数万km)以上まで延びる構造物(塔、レール、ケーブルなど)に沿って運搬機が上下することで宇宙と地球の間の物資の輸送を可能にする概念である。静止軌道上の人工衛星から地上に達するケーブルを垂らし、そのケーブルを伝って昇降することで、地上と宇宙空間を往復するというイメージ。ケーブルの全長は約10万km。つまり最上階は「ブルジュ・ハリファ」の12万倍の高さに相当する。想像を絶するスケール。なんとも夢物語のようではあるが、現在の技術の延長線で可能性も見えてきているようなのだ。ケーブルの強度が最大の技術課題らしいが、それもカーボン・ナノチューブの発見・実用化によって可能性が見えてきている[4]。昇降機はもっと現実的課題で、日本の大学や研究機関も含めて複数の研究者が開発を行っており、気球から吊したテープに小型モデルを昇らせる技術競技会も行われるくらい、具体的な取り組みが始まっている[4][5]。

さて、一方の地下階数の世界一はどこの施設なのであろう。いろいろ調べてみるものの、このような情報を見つけることはできなかった。恐らく巨大な地下施設というのは、軍事機密に関わる場合が多くて、世に公表されることが少ないのだと思う。アメリカの軍事施設「エリア51」あたりには、想像を絶するような地下施設が造られているのかもしれない。

コロラド鉱山大学、Edgar実験鉱山坑内での授業
コロラド鉱山大学、Edgar実験鉱山坑内での授業

私は大学で穴堀りを専門とする資源開発工学(鉱山工学)を学んだけれど、この業界では有名な工科系大学の名門、コロラド鉱山大学(Colorado School of Mines)には大学の地下施設があると聞いたことがあった。今回改めて調べてみると、かつての銀(金、鉛、亜鉛)の坑内掘り鉱山であり、現在同大学が所有するEdgar 実験鉱山のことのようだ。同鉱山では年間400~500人の学生が土質工学、地質鉱床、鉱山機械、発破等の講義を坑内で受けるばかりでなく、鉱山保安研修にも使われ、年間数千人の観光客も受け入けれている[6]。上の写真は、学部学生が坑内で講義を受けている風景である[7]。学生時代、こんなエキサイティングな地下授業を受けていたら、私の人生も変わっていたかもしれない。

地下1000mの巨大実験施設(スーパーカミオカンデ)
地下1000mの巨大実験施設(スーパーカミオカンデ)

鉱山施設で思い出したが、日本には有名な地下研究所がある。東京大学宇宙線研究所の付属施設、神岡宇宙素粒子研究施設がそれだ。2002年、小柴昌俊東京大学名誉教授のノーベル物理学賞受賞で有名になったニュートリノ観測装置カミオカンデが設置された場所で、岐阜県飛騨市の神岡鉱山跡地下1,000mに存在する[8]。大深度地下施設は、鉱山跡が有効活用されるようだ。

さらに調べてみると、鹿島建設の考える、なんと、東京の地下3,000~4,000mに、直径500mの巨大な地下空間を建設するというとんでもない夢物語を見つけた[9]。

「100かいだてのいえ」の話から、こんなマニアックな話にまで脱線してしまったが、前回の「世界一速い車」のように自動車で速度の限界に挑むだけでなく、高さ、深さへも挑戦する人類の夢は尽きない。

[参考・引用]
[1]ドバイ世界一ビル、名称変更に憶測も、ashi.com、2010年1月5日、
http://www.asahi.com/international/update/0105/TKY201001050171.html
[2]アル・ブルジュ、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%AB%E3%82%B8%E3%83%A5
[3]超高層建築物、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B6%85%E9%AB%98%E5%B1%A4%E5%BB%BA%E7%AF%89%E7%89%A9
[4]起動エレベーター、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BB%8C%E9%81%93%E3%82%A8%E3%83%AC%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%BF
[5]1st JapanSpaceElevatorTechnical & EngineeringCompetition、(社)宇宙エレベーター協会、
http://jsea.jp/ja/2009-04-23-About-JSETEC
[6]海外の鉱山関係大学における大学院教育について ―英・米・加編―、近藤敏、五十嵐吉昭、金属資源レポート、p99、2006年9月、
http://www.jogmec.go.jp/mric_web/kogyojoho/2006-09/MRv36n3-07.pdf
[7]Edgar Mine、Dept. of Mining Engneering、Colorado School of Mines、
http://mining.mines.edu/edgar_mine.html
[8]東京大学宇宙線研究所神岡宇宙素粒子研究施設ホームページ、
http://www-sk.icrr.u-tokyo.ac.jp/index.html
[9]特集1:夢の巨大地下空間をつくる、特集:鹿島の考える21世紀、月間KAJIMAダイジェスト、2001年1月、
http://www.kajima.co.jp/news/digest/jan_2001/tokushu/toku01.htm
[10]未来のトンネルワールド、土木学会、
http://www.jsce.or.jp/contents/hakase/tunnel/18/index.html

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Posted on 2010/01/09 Sat. 20:55 [edit]

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コメント

オーサー・ビジット

昨日の朝日新聞…児童書を扱っているコーナーの冬休み特集で、作者の岩井さんが「親子でオーサー・ビジット」というイベントに招かれた記事がありました。
その会場で、子供たちと全長10メートル102階建ての家を完成させたとか。
http://www.asahi.com/shimbun/dokusho/authorvisit/family/101031.html

23日から武蔵野市の市立吉祥寺美術館で「100かいだてのいえのひみつ」展が開催されるそうです。

URL | ひろこ #-
2010/12/19 20:11 | edit

Re: オーサー・ビジット

ひろこ様、情報ありがとうございました。
「親子でオーサー・ビジット」のことは知りませんでした。面白い企画ですね。我が家にゆかりのある学校に訪問者はいないか調べてみましたが、私の母校も含めいませんでしたね。この企画ではないですが、子供たちの小学校には今年、中井貴恵さんが読み聞かせ会で来校されました。
100かいだてのいえのHPでは、全国から応募された”いえ”の合計がなんと11322階になったそうです。うちの娘の描いたペンギンのいえもブログで紹介され、大変喜んでいました。

URL | papayoyo #-
2010/12/20 22:19 | edit

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