クルマノエホン livres d'images de voitures

楽しいクルマ絵本の世界/エンスーのためのクルマ絵本ライブラリー

世界一速い車  

Thrust SSC
出典:http://lrnc.cc/_ct/16874848

今年の書き初めは、年頭らしくスケールの大きなクルマネタについて記事にしようと思う。前回紹介の絵本「スピード図鑑1くるま」を受けての、世界一速いクルマのお勉強。

ひと口に「速さ」といっても、最高速度や加速度、ある特定の距離の完走時間といったいろいろな定義が考えられるが、ここでは最もわかりやすい最高速度の記録(※)について言及しようと思う。2010年1月5日現在、国際自動車連盟(FIA)公認の自動車世界最速記録は、1997年10月15日、アメリカネバダ州のブラックロック砂漠で叩き出した、冒頭の写真イギリスのスラストSSC号(Thrust SSC)の時速1227.723km(763.035mile)である。この世界新記録は音速の1.0175倍、すなわちマッハ1.02で、世界で初めて音速を超えた自動車(正確には10月13日にマッハ1.007を達成)となった。当然、音速を超えた瞬間は、ドーンという地響きのようなソニックブーム(衝撃波)が発生した[1]。戦闘機の飛行中ではなく、自動車の走行時にである。この脅威のスピードの一端は、以下のYouTubeで垣間見ることができる。



この記録達成は、自動車のスピード記録に挑み続けているイギリスの実業家、リチャード・ノーブル卿(Sir Richard Noble)のプロジェクトにより成されたもので、ドライバーはオックスフォード大学数学科出身の空軍パイロット、アンディ・グリーン(Andy Green)[1]。つまり彼が、人類史上初めて地上で音の壁を破った男となった。

もちろんこんな速度を普通の内燃機関エンジンで出せるはずもない。推進機関はジェットエンジンである。SSC は全長16.5m、全幅3.7m、重量は10.5トンで、ジェット戦闘機 F-4ファントム に積まれるものと同じロールスロイス・スペイと呼ばれるエンジンを2基搭載。最大出力は11万馬力[2]。設計上の最高速度は時速約850mile(時速1368km)なのだそうだ。車輪は数ミクロンオーダーの精度による鍛造アルミニウム合金の削り出しで、最高速でホイールは毎分8000回転する。音速を超えるようなホイールの回転では、空気入りタイヤではもたないからである。120個のセンサーでモニターされ、2基のコンピュータでアクティブサスペンションを含めた車両制御を行っている[1]。

La Jamais Contente
La Jamais Contente号
出典:https://en.wikipedia.org/wiki/La_Jamais_Contente

自動車が音速の壁を破るまでは、スピード記録に挑んだ男たちのいくつもの戦いがあった。初めて時速60マイル(時速100km)を出したのは、1899年、ベルギー人カミール・ジェナッツ(Camille jenatzy)がラ・ジャメ・コンテント号(La Jamais Contente=フランス語で「決して満足しない」の意味)という重量1.5トンの電気自動車で達成した時速105.86km(時速65.79mile)であった[1]。

Stanley Steamer
Stanley Steamer号
出典:http://patentpending.blogs.com/patent_pending_blog/2005/11/steam_car_sets_.html

時速100マイルの壁を破ったのは、1904年、フランス人のルイ・リゴリー(Louis Riggolly)の運転する蒸気エンジン車ゴブロ・ブレリー号(Gobron-Brillie)が時速166.64kmを出す。時速120マイルを初めて越えたのも蒸気エンジン車で、1906年、アメリカ人フレッド・マリオット(Fred Marriot)の運転するスタンレー号(Stanley Steamer)が時速196.61kmを出す(アメリカの自動車団体が主張する非公式記録は時速204km)。しかしこれ以降、蒸気機関と電気自動車の時代は去り、本格的に内燃機関の時代へと変遷していく[1][3]。

Bluebird at Bonneville by Jack Vettriano
Bluebird at Bonneville by Jack Vettriano[6]

当初はヨーロッパの貴族同士の戦いともいえるスピード競争であったが、1920年代になると自動車メーカー同士が速度を競うようになる。特に20年代は、マスコミが競争を煽り、多くのスタードライバーを誕生させた。その中でもブルーバード号(Bluebird)で記録更新を続けた英国の富豪、マルコルム・キャンベル卿(Sir Malcolm Cambell)や、ビール王ケネルム・ギネス(Kenelm Lee Guinness)は有名である[1]。(上記のイラストは、現在イギリスで最も注目される水彩画家のひとり、ジャック・ベトリアーノ(Jack Vettriano)の描いたブルーバード号のポスター[6]。)

30年代になると、「ポルシェ 自動車を愛しすぎた男」でも紹介したように、ヒトラーは国策としてレース車両や速度記録車の開発を推進する。特に、設計最高速度が時速650km、ダイムラーのV12気筒44.5L、3500馬力のDB603エンジンを搭載し、6輪(駆動は後方4輪)でトラクションコントロールまで装備され、第2次世界大戦の勃発で一度も走ることのなかった伝説のT80構想は特筆すべきものがある。

Railton Mobile Special
Railton Mobil Special号
出典:http://www.peterrenn.clara.net/l.s.r.html

戦後は英国と米国の一騎打ちになってくる。1947年、英国人ジョン・コブ(John Cobb)は、空力設計されたアルミニウム製の軽量車体、レイルトン・モービル・スペシャル号(Railton Mobil Special)で時速394.194mile(時速634.258km)を出し、時速400マイル時代へと突入したが、内燃機関での記録としてはほぼ限界に近づいていた[3]。

レイルトン号の新記録達成場所は、米国ユタ州のボンネヴィル・ソルトフラッツ(Bonneville Solt Flats)。ボンネヴィルは、現在に至るまで地上最速の男たちが集まる聖地として知られる。一面、真っ白な約3万エーカーという広大な塩平原が続くこの場所は、ユタ州州都ソルトレイクシティから西へ185km。毎年8月から10月にかけてあらゆる自動車やバイクのカテゴリーのスピードウィーク(速度記録会)が開催されることで有名。映画「世界最速のインディアン」の舞台にもなった[1]。

Bluebird CN7 Goldenrod
(左)Bluebird CN7
出典:http://www.ssplprints.com/image/97761/donald-campbells-record-breaking-bluebird-cn7-car-1962
(右)Goldenrod号
出典:http://www.gettyimages.co.jp/license/556950193
Spirit of America(「のりものスピード図鑑1くるま」より)
Spirit of America号(「のりものスピード図鑑1くるま」より)

1960年代になると、国際自動車連盟(FIA)は、これまで認めていなかったロケットを含むジェット推進式の車両によるスピード記録を認めた。戦前、ブルーバード号で9つの新記録を打ち立てた前出のマルコルム・キャンベルの息子、ドナルド・キャンベル(Donald Cambell)も父子2代に亘って世界記録に挑戦した。ジェット推進によるブルーバードCN7(Bluebird CN7)によって、1964年時速403.1mile(時速648.59km)を達成している。その後は、アメリカ人クレイグ・ブリードラブ(Craig Breedlove)の操縦するスピリット・オブ・アメリカ号(Sprit of America)や、4基の内燃機関で推進するアメリカのゴールデンロッド号(Goldenrod)、アメリカのゲイリー・ガベリッジ(Gary Gabelich)が操縦する、液化天然ガスを燃料とするロケット自動車、ブルーフレーム号(The Blue Flame)、前出リチャード・ノーブル卿の操縦するスラスト2号(Thrust2)など、そして現在最速のトラストSSCに至るまで英米勢がしのぎを削ってきた[1][3][4]。

The Blue Flame(「小学館の学習百科図鑑24自動車」より)
The Blue Flame号(「小学館の学習百科図鑑24自動車」より)

このスピード記録競争、まだまだ終わりはないようで、先のリチャード・ノーブル卿が、時速1600km(約マッハ1.3)近い速度を出すロケット動力付き自動車を開発し、記録更新に挑戦すると発表。新型車両の開発を2009年中に完了させ、2011年までに新記録樹立を目指すらしい[5]。蓮舫議員には恐らく理解できないかもしれないが、男は理屈抜きに「世界一」という夢とロマンを追い続ける生き物なのです。

SSC Ultimate Aero
SSC Ultimate Aero
出典:http://mitsuru-1029.cocolog-nifty.com/blog/2007/10/ssc_ultimate_ae.html

ちなみに、市販車の世界最速車は、2010年1月5日現在、SSC Ultimate Aeroの時速約412km(256.15mile)なのだそうだ。詳しくは、以下URLを参照されたし。
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20071016_fastest_car/

さて、昨年は小生のしょうもないブログへ寄り道してくれたり、コメント、拍手をいただき感謝であります。私の絵本紹介ブログを通して、少しでもクルマ好きの子どもたち、親御さんが増えることを期待しています。本年もどうぞよろしくお願いします。また、お気軽に叱咤激励、ご意見、ご質問等のコメントをいただければ幸いです。こんなクルマ絵本見つけたよ情報も大歓迎です。

(※)現在の公式レギュレーション[6]であるが、
・車輪は4つ以上。
・路面の勾配は1%未満。
・走路中間の1マイルの平均速度を測定する。
・1時間以内に往復し(同じ走路でなくてもよい)、往路と復路の速度を平均する。
・記録挑戦にはFIA(国際自動車連盟)のオフィシャルスタッフが測定に参加する。




[参考・引用]
[1]マッハ1.02 地上最速の男たち、山崎明夫、エイ出版社、2007
→自動車の速度記録の歴史について詳細にまとめられた優れた資料です。
[2]スラストSSC、Wikiprdia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%88SSC
[3]CARS、Robert Crowther・著、Candlewick Press、2009
[4]小学館の学習百科図鑑24自動車、高島鎮雄・編著、p64、小学館、1990
[5]「自動車で時速1600キロを」、世界最高速度記録更新へ新プロジェクト始動 英、AFP BBNews、2008年10月24日、
http://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2531736/3459975
[6]The Bluebird Collection、Jack Vettriano.com、
http://www.jackvettriano.com/exhibitions/
[7]THE LAND SPEED RECORD、THE SPLENDID WHIZZER ASSOCIATION、
http://www.peterrenn.clara.net/l.s.r.html
スポンサーサイト

Posted on 2010/01/05 Tue. 19:21 [edit]

category: cars/車のお勉強

tb: 0   cm: 0

コメント

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://ehonkuruma.blog59.fc2.com/tb.php/216-8cc7be90
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

ブログ内検索

RSSフィード

リンク