東京モーターショーのシンボルマーク

先日11月3日で終了した第41回東京モーターショーの公式入場者数は61万人だったそうだ。やっぱりね、という感想だったが、会期は当初予定されていた10月23日~11月8日までの17日間から4日間短縮して、入場者数も昨年度並みの150万人から100万人に下方修正されていたにも関わらずこの結果である。100万人を割り込んだのは32年ぶりだそうだ[1]。海外の乗用車メーカーの出品がわずか3社ということで、かなりテンションの下がるオートショーになることは想像できたものの、後学のために私も一応その61万分の1として、見物に出かけた。今回はそのときの報告記。(上図は東京モーターショーのシンボルマーク)

トミカブース プレステブース
(左)トミカブース(右)プレステブース

約3時間かけて横須賀から会場の幕張メッセに到着。相変わらずのアクセスの悪さである。東京モーターショーじゃなくて、千葉モーターショーだね。東ホールから会場に一歩入り、目を疑った。そこはモーターショーの会場ではなく、トイズ(おもちゃ)ショーの会場と化していた。我々世代には懐かしい、「マッハGoGoGo」の実物マッハ号が展示されたチロルチョコブース、プレステのグランツーブース、タカラトミーのトミカとチョロQブース、場所柄東京ディズニーリゾートのミッキーバスの展示に、前回までは会場の隅っこに追いやられていた未来のクルマをテーマに描いた児童絵画展が、会場の半分以上を占めていた。東ホールでの大手自動車会社のブースは日産と三菱だけ。

日産「LandGrider」
日産「LandGrider」

前回、GTRのお披露目で大盛況だった日産ブースも、2010年市販予定の電気自動車「LEAF」が目玉では客寄せ効果はたいして期待できず、比較的閑散としていた。さりげなくGTRも展示しており、さすがに人が集まっていたが、私が興味を引いたのはタンデムで2人乗車の小型EV「LandGrider」。カーブ走行時にはバイクのように車体を傾けてリーン走行が可能なユニークな「のりもの」である。デザインもマシン然としていてなかなかいいんじゃない?これで50万円くらいで販売されれば売れるかも(でも充電はどこで行うの?)。ただ全体として、電気自動車を起死回生の切り札に掲げている日産にしては、その熱意があまり伝わらないブースであった。

日産自動車:東京モーターショー2009

レクサス「LFA」
レクサス「LFA」

中央ホールのメインはトヨタブース。「環境技術」というイメージのトヨタであるが、今回の売りは「スポーツ」のトヨタという印象。2000年から開発を進めてきたトヨタ、もといレクサス「LFA」が、衆目を集める。ヤマハ製4.8L、V型10気筒エンジンで560馬力を引き出すモンスターFRスポーツは、2010年市販される。世界で500台限定、日本の割り当ては165台のみで、3750万円と価格もモンスター級だ[2]。豊田社長自らステアリングを握り、このLFAでニュルブルクリンク24時間耐久レースに参戦したほど(結果は散々ではあったそうだが[3])このモデルにかなり入れ込んでいるようだ。しかし、このショーの数日後にトヨタがF1からの撤退宣言[4]してからは、トヨタのモータースポーツに賭ける本気度や、こんなバブリーな高級スポーツカーが本当に市販されるのかが疑わしくなってきた。小さい子供が「この車カッコイイ!」と話していたことが唯一の救いか。確かに個人的にもGTRのアクの強いデザインよりも、素直にカッコいいとは思ったが。

トヨタ「FT-86コンセプト」
トヨタ「FT-86コンセプト」

もう一台の小型スポーツカー「FT-86コンセプト」も巷では評判になっている。漫画「頭文字D」で有名になった「AE-86(カローラレビン/トレノ)」、通称「ハチロク」の後継車。いまやトヨタ傘下となったスバルの水平対向4気筒エンジンが搭載され、2011年市販化の予定だそうだ[5]。一瞬、マツダ車かと思わせるエクステリアデザインだが、こちらも個人的にはなかなかいいね!と感じた一台。最近のトヨタ車のデザインは基本的には嫌いだが、このスポーツカー2台のデザインはなかなか購買欲をそそる。もっともLFAは薄給のリーマンには買えるはずもないが、トヨタ(レクサス)にせよ、日産にせよ、1000万円を超えるLAFやGTRも結構だが、もう少し身の丈に合ったエレガントな大衆スポーツを商品化してもらいたい。利益志向が強すぎるのか、バブルを経験したせいなのか、日本の自動車会社の商品感覚は昭和の時代と比べて足元の大衆の嗜好から大きく乖離してしまった気がしてならないのである。なんかエラソーになったよね。

トヨタのお家芸「環境」についてのプレゼンも勿論あった。未来のモビリティライフと称して、走行距離に応じて移動手段を使い分けるコンセプトを紹介していた(動画はここから)。近所の買い物などの近距離移動にはEVや、トヨタ自慢の「i-REAL」、「Winglet」などのパーソナルモビリティで、家族旅行のような中・長距離移動にはお得意のHV/PHEV(ハイブリット)で、旅客・輸送などの長距離移動にはFCV(燃料電池)でと。FCVはプライベートではなく、パブリックやロジスティック(物流)と言い切っていたのが印象的。やはり、コストやインフラが足かせで、FCVを乗用として使うソリューションを今のところ見出せないということか。そういえば、燃料電池車はブースの片隅に追いやられ、見る客もほとんどいなかったなあ。

トヨタ自動車:東京モーターショー2009

一方、かつて大衆ライトウェイトオープンスポーツの傑作、ユーノスロードスターを生み出したマツダのブースは派手さはないものの、アイドリングストップシステム「i-stop」の紹介などを見ると、マツダらしい真面目な取り組みに好感が持てた。通勤時での信号待ちの頻度の多さに常日頃へきへきしているので、ハイブリットに比べれば、この技術は非常にシンプルな解だし効果的だ(開発過程ではいろいろご苦労があったようだが[6])。燃費低減効果約10%とのことだが、もっとあるのではないだろうか。

マツダ:東京モーターショー2009

ホンダのメッセージボード
ホンダのメッセージボード

西ホールの主役はホンダだ。ブースコンセプトの「ないものをつくれ。」は実にホンダらしい。各展示エリアには、大きなメッセージボードが吊らされており、それぞれのステートメントが非常にわかりやすかった。ブースの構成は、今回の出展企業の中で一番よかったのではないか。N360をモチーフとしたEVコンセプト「EV-N」もかわいかったし。しかし、この好印象もここまで。

ホンダ「UX-3」 HOT Drive System 概念図
ホンダ「UX-3」とHOT Drive System 概念図

今回私が一番興味を持っていたのが、ホンダのパーソナルモビリティ「UX-3」。セグウェイのトヨタ版ともいえる「Winglet」に比べても、その形と動きがホンダらしく独創的。セグウェイやWingletと同様に、バランス制御技術を使って自立している「一輪車」というのが面白い。前に後ろに横に斜めにと自由自在に動くことが出来る、複合車輪による全方向移動機構(Honda Omni Traction Drive System)を採用[7]。大径車輪と、その大径車輪を軸とした複数の小径車輪の構成によって、全方向に動けるようになっているのだが、大径車輪は想定できるとして小径車輪のメカニズムがよくわからぬ。当然、会場には技術者の説明員もスタンバイしているはずだと、以下の質問を準備していた。

(1)小径車輪の駆動メカニズムはどうなっているのか?小径車輪の駆動源はどこに?
(2)各方向に移動する際の大小各車輪の駆動メカニズム(組み合わせ方)はどうなっているのか?
(3)セグウェイやWingletのような二輪駆動を採用せずに、より不安定な一輪駆動を選択した理由は何故か?

ホンダ「EV-N」 ホンダ「N360」
(左)ホンダ「EV-N」(右)ホンダ「N360」

しかし、近くにいたスタッフに聞いてみたところ、「今、技術説明員がいないので」と無碍に断られる。動いている「UX-3」は見られないし、仕方なくブース内で時間をつぶしていると、何かのショータイムが始まるらしくステージ前は人だかり。すると、「今から、でんじろう先生のスペシャルステージが始まりますが、小学生の見学者が優先なので、その他の方は一旦、このブースから出てください。」と追い出されてしまった。立ち入り禁止のロープまで張られて。「え゛ーっ!この仕打ちは何やねん!考えられへん!」と怒り心頭でホンダブースを後にする。

もし、このブログをホンダの開発担当者の方がご覧になっていたら、上記質問にご回答ください。

ホンダ:東京モーターショー2009

第1回COTY「マツダファミリア3ドアハッチバック」
第1回COTY「マツダファミリア3ドアハッチバック」

気分を変えて部品展示を回り、中央ホールに戻って、未来よりも過去を振り返るかとCOTY(日本カー・オブ・ザ・イヤー)30周年記念展を見に行く。第1回はファミリア3ドアハッチバックかいな、ソアラは同級生のボンボンが乗っとったな、S13シルビアはいまでもカッコええなあ、と昔を懐かしみながら、順繰りと見ていく。すると所々で展示車がイヤーカーとは別物になっている。想像するに、会場の穴埋めをすべく、急遽、この展示企画が決まったのであろう。全てのイヤーカーの準備が間に合わず、何台かは、特別賞受賞車など他の車を展示したのだと思う。

この中途半端さで完全に興ざめし、今年のモーターショー見学もお開きに。パンフレットも経費削減で薄く、小さくなったので帰りの荷物も軽い軽い。人が少ない分、対応する余裕が生じたのか、其処ここのコンパニオンのおねえちゃんが、カメラ小僧のために過剰なポーズを取っていたのが痛々しかった。

それにしても、外国車の展示が少ないのは何とも寂しい。外国車の登録台数の割合が極めて低い日本では、このようなショーでないとなかなか実物にお目にかかれないので非常に残念だ。フランクフルトで出展されていたテスラモーターズのEVスポーツなんか見てみたかった。

グローバルで強いトヨタ・ホンダ・日産のお膝元であり、軽自動車という手厚く保護された特殊なセグメントを持つ日本とはいえ、国産車のシェアが9割を超える国内市場は異常である。2台に1台がトヨタという寡占状態もまともとは思えない。個性の時代といわれて久しいが、こと日本国内においては、一般的には狭い価値観でしか自動車は語られない。多様な価値観を醸成するためには、やはりいろいろなバックグラウンドを持つ車を見て、触って、乗ってみる機会がないとダメなのだと思う。そんな大事なチャンスが、また一つ失われつつある。日本の自動車業界も「ガラパゴス化」していくのであろうか。

結局のところ、誰に見せたいショーなのか、子どもなのか、若者なのか、ジャーナリストなのか。クルマの進む方向は環境なのかスポーツなのか、それともその両立なのか。何となくテーマや焦点のぼけたオートショーに感じてしまった。自動車業界の迷走ぶりが如実に現れてしまったような気がする。急激な経済不況の影響があるとはいえ、対費用効果の著しく低い日本のオートショーに、次回以降、海外メーカーが戻ってくる保証もない。たぶんアジア地区のメインは上海にシフトするであろう。モーターショー離れ、クルマ離れはもう自動車会社一社で解決できないレベルに来ている。自動車業界を挙げて、これまでの何でもてんこ盛りのショーのあり方を一から再考しないと、東京モーターショーの未来はないだろう。主催者の自動車工業会は、来年春にも今後の方向性を示すらしい。

[参考・引用]
[1]東京モーターショー、入場者は目標の6割61万人どまり、2009年11月4日、asahi.com、
http://www.asahi.com/business/update/1104/TKY200911040335.html
[2]トヨタ社長が乗りたいスポーツカー、清水和夫、2009年10月27日、carview.com.jp、
http://www.carview.co.jp/road_impression/article/lexus_lfa/429/1/
[3]社長が代わればクルマは変わる(2)~豊田章男新社長がやるべきこと、牧野茂雄の「深読み自動車マーケット」、2009年10月29日、日経ビジネスONLINE、
http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20091026/208024/?P=1
[4]<トヨタ>F1今年限り撤退 日本勢ゼロに、2009年11月4日、毎日新聞、
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091104-00000005-mai-bus_all
[5]ハチロク復活! トヨタ、小型FRスポーツ「FT-86 Concept」、2009年10月6日、日経トレンディnet、
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/special/20091005/1029458/
[6]「逆転×逆転」で、夢のエンジンが動く マツダ「SISS(スマート・アイドリング・ストップ・システム)」(その1)、佐保 圭、2009年7月29日、日経ビジネスONLINE、
http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20090727/201012/?P=1
[7]人との調和を目指した新たなパーソナルモビリティ技術を開発~前後左右に移動可能な世界初の駆動機構を採用~、2009年9月24日、ホンダホームページ、
http://www.honda.co.jp/news/2009/c090924.html
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