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楽しいクルマ絵本の世界/エンスーのためのクルマ絵本ライブラリー

Der Blaue Autobus/あおいバスといたずらオトカー  

Der Blaue Autobus

訳すのがめんどうで、原書を購入してからずーっと本棚に眠っていた絵本を紹介する。“Der Blaue Autobus”(James Krüss・文、Lisl Stich・絵、Boje出版)というドイツ語の絵本なのだが、最近訳書「あおいバスといたずらオトカー」(ジェームス・クリュス・文、リースル・シュティッヒ・絵、いしかわもとこ・訳、福武書店)を手に入れたので、改めて日本語で読むことにした。

あおいバスといたずらオトカー

ドイツ語は学生時代の必修だったが、まったくもって身についていない。教養課程の1年次で堅苦しい文法を学んだ後の、2年次のリーダーがいけなかった。テキストは、いきなりカール・ヤスパースヴェルナー・ハイゼンベルク。昔の旧制高校や帝大であれば、実存主義で有名なヤスパースや、不確定性原理のハイゼンベルクなんて、基礎教養の一つだったかもしれないが、ちゃらんぽらんな地方大学の学生、しかも哲学なんて無縁な山師の候補生(資源開発工学科の学生)にとっちゃあ、物理学のハイゼンベルク先生は兎も角(量子論の授業も受けたが、理解不能)、ヤスパースって誰?ってな具合だ。

いかにも小難しそうなカール・ヤスパース
いかにも小難しそうなカール・ヤスパース

ドイツ語文法を学んで1年足らずの阿呆学生に、大哲学者の説法や、大物理学者の自伝など、辞書片手に訳文を書いてみたところで何を言っているのかさっぱり理解できぬ。大学に入りたての頃には、英語とは別の第2外国語の授業に、大人になったような新鮮な気分がしたものだったが、このリーダーでそれもフェードアウト。だいたい、ドイツ語は合成語が多くて辞書を引いても一発で意味がわからない場合が多い。それに、なんでもっと身近な、「フェルディナントくんの日常」といった類の題材をテキストに使わないのだろう。まだポルシェ博士の自伝の方が、工学部の学生には親近感が沸いたかも。ドイツ語学習には哲学や思想書の古典といった固定観念があるのかなあ。

若き日のハイゼンベルク
若き日のハイゼンベルク

その後ハイゼンベルクのテキストの訳書があると知り、改めて日本語訳を読んだのが名著「部分と全体(原題は“Der Teil und das Ganze”)」(山崎和夫・訳、みすず書房)。さすがは知の巨人、物理学の大家たちとの対話は別格として、彼の学生時代の友人との議論を読んで、あまりの知的レベルの高さと己の学生生活の幼稚さとのギャップに、打ちのめされた記憶がある。

専門課程に進んでも、基本は英語のテキストの世界。ドイツ語文献に触れる機会は皆無だった。それ以来、ドイツ語とは縁遠くなってしまった。

さて社会人になって、仕事上での外国語文献は相変わらず英語。ドイツに行ったこともないし、ドイツ語との触れ合いは、読みもしないのにミヒャエル・エンデの「モモ」や「はてしない物語」の原書を手に入れたくらい。そして車の絵本を集めはじめて見つけたのが、この鮮やかな青色のバスがかわいい本書である。絵本なので、辞書を引き引きなんとか読めたかもしれないが、前述のようにドイツ語アレルギーなので、そのまま読まずに放っておいた。

うちの嫁は幼少の頃、数年間デュッセルドルフに在住していた一応帰国子女なので、訳してみない?と声をかけたのだが、彼女のドイツ語も完全に錆付いていて「???」。そして、やっと母国語で読める訳書にめぐり合ったという次第である。

「Der Blaue Autobus」の一部

話がだいぶそれてしまったので、本題に戻る。本書は青いバスと、黒いプードルのオトカーくんのゆかいなお話。子どもたちを乗せ、町の中を元気に走る青いバス。バスの屋根の上には、かわいいぬいぐるみや遊具を載せている。園バスであろうか。突然バスの前に立ちはだかる、やんちゃな犬のオトカーくん。彼のいたずらのおかけで、町中は大騒ぎ。

読者の目を捉える、爽やかな青色のバス。ドイツの絵本は決して派手さはないのだが、素朴で優しいドイツ絵本らしい色使いに心が和む。バスやオトカーくんもさることながら、町の人々の表情も実にいい。肉屋の娘、アンネグレートの青ざめた顔は最高です。訳文でしかわからないが、リズム感のある文章も心地よい。

あおバスくん

本書は1959年に東西ドイツ時代のベルリンで出版された。ドイツで長年愛され続けているロングセラー絵本だ。日本でいえば「しょうぼうじどうしゃじぷた」のような絵本といえばよいだろうか。翻訳書の「あおいバスといたずらオトカー」は絶版だが、昨年フレーベル館より「あおバスくん」として復刊している。タイトルだけでなく、訳者もはたさわゆうこ(畑澤裕子)さんに変わっているので、訳文を比較してみるのもよいかもしれない。

James Krüss
James Krüss

作者のジェームス・クリュス(James Krüss)氏は、1926年、ドイツ・ヘルゴラント島生まれ。リューネブルグの高校で教職を学び、1948年に卒業した後、教師、ラジオのレポーター、編集者、ジャーナリストなどの仕事をしながら、作家としての生活を始める。1949年に南ドイツ新聞に子どものための詩を発表したのが、子どものための最初の仕事で、その後、次々に児童書を書くようになった。現在までに140冊以上の著作があり、ベルリンには、彼の名にちなんだ小学校も建てられているほど、戦後のドイツ語圏で人気のある児童文学作家のひとり。1960年ドイツ児童文学賞、1968年国際アンデルセン賞受賞。1997年没[1]。

一方、イラストのリースル・シュティッヒ(Lisl Stich)氏は、1913年、ドイツ・バイエルン州生まれ。ニュルンベルク、ベルリンの美術学校で学んだのち、絵本、新聞の風刺画、本の挿絵等の画家として活躍。2000年没。このコンビでのその他の絵本には、「たびにでたろめんでんしゃ」「きかんしゃヘンリエッテ」「ゆうびんひこうきこうのとりごう」(フレーベル館)などがある。いずれも楽しいのりもの絵本だ。

「あおいバスといたずらオトカー」版の訳者、いしかわもとこ(石川素子)さんは、1962年東京生まれ。10歳から13歳まで旧西独に滞在、現地の小学校・ギムナジウムに通う。東京大学大学院人文科学研究科独語独文学専門課程修了。ドイツ語圏の児童書の翻訳・紹介に従事、二児の母でもある。「あおバスくん」版の訳者、はたさわゆうこ(畑澤裕子)さんは、1960年秋田県生まれ。上智大学文学部ドイツ文学科博士後期課程修了。明治薬科大学、東邦大学で、ドイツ語担当非常勤講師を務める。専門はドイツメルヘン文学研究。

ドイツ絵本もいいな、そんな思いにさせる良書である。久しぶりに独語辞書でも開いてみるか。

[参考・引用]
[1]ジェイムズ・クリュス、子どもの本の研究者 鈴木宏枝のサイトへようこそ、
http://homepage2.nifty.com/home_sweet_home/kruess.htm
[2]ミュンヘン国際児童文学館、ちえぞうのドイツいもいも日記、
http://kartoffel.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/post_cf3c.html
[3]James Krüssホームページ、
http://www.james-kruess.de/

部分と全体―私の生涯の偉大な出会いと対話部分と全体―私の生涯の偉大な出会いと対話
(1999/11)
W.K. ハイゼンベルク

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あおバスくんあおバスくん
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Posted on 2009/11/08 Sun. 15:23 [edit]

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