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楽しいクルマ絵本の世界/エンスーのためのクルマ絵本ライブラリー

じどうしゃ のりもの絵本名画伯たちの競作本  

じどうしゃ

先日の関田克孝氏の講演「乗り物絵本の歴史と魅力」でも紹介された、昭和期に活躍されたのりもの絵本画家たちの競作ともいえる絵本が、我が家の蔵書にもあった。1969年出版の「じどうしゃ」(小山泰治、池田献児、木村定男、谷口健雄、中島章作、古藤泰介・画、小学館のベビー絵本12)である。

我々世代が幼少の頃にはずいぶんお世話になった保育絵本の類である。昔は、どこの町の本屋にも、店頭にこのような絵本が並んでいた。それなりに古いものなので、汚れや傷も目立つが、ページをめくると、40数年前にタイムスリップしたようで非常に懐かしい。

日産A30型グロリア
日産A30型グロリア

小山泰治の描く表紙の日産A30型縦目のグロリア、通称「タテグロ」が実にいい。気品と高級感がよく表現されている。初代グロリアは今はなきプリンス自動車(発売当時は富士精密工業)のフラッグシップカー。初代スカイラインをベースに高級仕様にしたもので、当時の皇太子殿下(今上天皇)へも納入された。2代目S40型プリンス・グロリアが、’66年の日産・プリンス自動車の合併によりニッサン・プリンス・グロリアと車名が変わり、この3代目A30型で日産・グロリアとなる[1]。表紙の絵をよくみると、グリルに小さなNISSANロゴが見て取れる。

小山泰治は1921年生まれ。日本の商業美術の草分け的存在である藤沢龍雄に師事。昭和13年よりそのデッサン力が認められて絵本画家の道を進む。人物画を好んで描いたが、憧れて師事した藤沢画伯の影響を脱するのに苦労したという。大陸より復員後、再び絵本の世界へ。「のりもの絵本」では船舶や私鉄電車を好んで描き、特に客船の表現力は評価され、海外版まで刊行された。60年代半ばより引退して地元の葉山町議会議員を務めた[2]。

三菱ふそうトラックT951型(池田献児・画)
三菱ふそうトラックT951型(池田献児・画)

池田献児が描くのは三菱ふそうトラック。1967年に登場したT951型と思われる[3]。

ダイハツ・スクールバス(木村定男・画)
ダイハツ・スクールバス(木村定男・画)

鉄道画家の重鎮、木村定男が描くのはスクールバス。フロントを見ると、“DAIHATSU”と読み取れる。ダイハツがマイクロバスを作っていたとは、不勉強で知らなかったが、車種は何だか皆目見当がつかない。それでも、バスに乗る園児たちの表情がいい。

木村定男
木村定男

木村定男は1922年生まれ。美術学校の洋画科に学び、卒業直前、海軍に出征。復員後、美術教師の傍ら「のりもの絵本」画家となる。ずばぬけたデッサン力で描いたC62型蒸気機関車や流線型電気機関車のEF58型のひく特急すばめ号は評判となり、木村定男の描いた表紙が全国の書店店頭に並んだ。昭和30年代は多忙を極め、居を大阪より逗子に移した。図鑑の仕事では、海外まで取材に出かけた。晩年は、油彩作品群や東武博物館ポスターを残し、生涯「のりもの」画家に徹した[2]。1999年没。前出の関田克孝氏が木村定男研究の集大成ともいえる「のりもの絵本 木村定男の世界」(フレーベル館)を上梓されたのは、既に前回で紹介のとおりである。

フォルクスワーゲン・バス(谷口健雄・画)
フォルクスワーゲン・バス(谷口健雄・画)

谷口健雄が描くのは、ご存知フォルクスワーゲン・バスのキャンピングカー。この時代、キャンピングカーを使って湖畔でキャンプなんて、それなりのブルジョアでしか経験できなかったはず。一般庶民のお子さんと、その保護者にとっては憧れの生活風景だったに違いない。家族が食事を楽しむ傍らに、携帯テレビが描かれているのだが、当時このようなハイテク商品があったのだろうか?

いすゞ自動車・TX消防ポンプ車(中島章作・画) 戦後復興期頃のTX消防車
(左)いすゞ自動車・TX消防ポンプ車(中島章作・画)(右)戦後復興期頃のTX消防車

中島章作が描くのは、消防自動車。いすゞ自動車が1947年から製造・販売したTX消防ポンプ車の初期型モデル(恐らくTX61ディーゼルトラックベース)と思われる。

中島章作は1912年生まれ。戦前から図鑑、科学雑誌のイラストレーションで活躍。戦後は昭和20~50年代まで「のりもの絵本」と図鑑の全般で活躍した。昭和50年代末に描いたJR中央線のオレンジ色の201系電車が主人公の作品「ぐんぐんはしれちゅうおうせん」や江ノ電全線の風物をテーマにした作品「うみのでんしゃぼくらの江ノ電」(いずれも小峰書店)は、今日も版を重ねて入手可能である。この2冊にも共通するが、鳥瞰図による表現を好んで描いた。特に絵本画家の同人展(ボッポ会)に出品された大正時代の京都の家並みを描いたタブローは、昭和60年頃、雑誌にも紹介され、話題になった。2009年没[2]。

トヨペット・T50型コロナタクシー(古藤泰介・画)
トヨペット・T50型コロナタクシー(古藤泰介・画)

古藤泰介が描くのは、トヨペット・T50型コロナのタクシーと、裏表紙の日産・初代 CSP311型シルビアのパトカーだ。タクシーには既に「自動ドア」という表示がされているが、タクシーの自動ドアって、いったいいつ頃から始まったのであろうか?

初代シルビアパトカー(古藤泰介・画)
初代シルビアパトカーの新聞広告
(上)初代シルビアパトカー(古藤泰介・画)(下)初代シルビアパトカーの新聞広告[4]

初代シルビアパトカーは作者のギミックだと思っていたのだが、実際にそれは存在した。第三京浜が開通した時に採用された、高速隊専用のパトカーが、初代シルビアだったそうだ[4]。5代目、S13型シルビアも美しかったが、ドイツ人デザイナー、アルブレヒト・フォン・ゲルツによる初代シルビアの本当に美しい造形も、みごとに表現している。

古藤泰介
古藤泰介

古藤泰介は1934年、東京に生まれる。少年時代の7年間を、島根県安来市の農家で育つ。帰京後、洋画研究所に通うかたわら、児童雑誌や絵本の仕事をはじめる。その後、教科書・図鑑などにイラストを描く。とくに鉄道、乗物、メカニックに関するイラストが多い。1994年没[5]。現在でも入手可能なクルマノエホン「ゴーゴー大レース」(岩崎書店)が遺作となった。

このように、昭和に活躍した「のりもの絵本」の名画伯たちは、名車をかくも美しく絵で再現をし、クルマノエホンにおいても、すばらしい仕事をされている。こういう(写真絵本でなくて)文字とおりの絵本が、近年になって姿を消していることが残念でならない。

[参考・引用]
[1]日産・グロリア、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E7%94%A3%E3%83%BB%E3%82%B0%E3%83%AD%E3%83%AA%E3%82%A2
[2]乗り物絵本の歴史と魅力、関田克孝、平成21年10月4日
[3]FUSOの歴史、1960年代、三菱ふそうトラック・バス株式会社ホームページ、
http://www.mitsubishi-fuso.com/jp/corporate/history/1960.html
[4]初代シルビア、パトカー。、2006年03月24日、マシンがー乙、
http://minkara.carview.co.jp/userid/150598/blog/1540068/
[5]古藤泰介美術館、
http://home.p08.itscom.net/koto/tkmuseumFrame.html
[6]いすゞ・TX、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%84%E3%81%99%E3%82%9E%E3%83%BBTX
[7]鉄道画家木村定男の公式ホームページ、
http://www7a.biglobe.ne.jp/~s-kimura/
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Posted on 2009/10/18 Sun. 19:54 [edit]

category: picture books about automobile/クルマノエホン

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コメント

この「すくうるばす」のモデル車はダイハツが1958年11月に発売した小型四輪トラック「ベスタ」の最終発展型となるDV200型車の特装ボディとして川崎重工業が架装した「ダイハツライトバス」で1963年6月登場の1861cc/85psエンジン搭載の個体と目されます(ベスタDV200は1960年10月~1963年前半までは1490cc/68psを搭載していた)。

参考文献:「日本のトラック・バス トヨタ/日野/プリンス/ダイハツ/くろがね編」三樹書房刊 145-147ページ 

URL | 真鍋清 #-
2014/06/18 22:04 | edit

真鍋様、いつもいつも貴重な情報ありがとうございます。
この絵本のどのクルマ7もいい味出しています。

URL | papayoyo #-
2014/06/19 21:03 | edit

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