児童図書館で本を借りてきた

昨日は家族で横須賀中央にお買い物に行ったついでに、駅前の横須賀市立児童図書館へ久しぶりに立ち寄った。本屋に寄って、本好きな子ども達に本をねだられるより、図書館で本を借りた方が得策と考えたのだ。この経済不況下、我が家も緊縮財政を強いられている。高い市民税を取られているからには、税金分は有効に活用しないとね。結局、20冊ほど借りてしまった。家に帰って朝刊を読んだ際、大阪府立児童文学館の記事[1]に目が止まる。「本の探偵」さんのお話だ。

子どものころに読んだ本をもう一度読んでみたい。でも、題名が思い出せない。そんな経験を持った大人の方は少なくないのではないだろうか。私は幼少の頃は、それほど本の虫ではなかったので、心に引っかかっている本はあまりないのだが、幼稚園の頃に配布されていたキンダーブック系の薄い冊子で読んだ高層ビルの建設のお話が異常に記憶に残っている。勿論、冊子名は覚えていない。当時、東京に日本最初の超高層ビル「霞ヶ関ビル」が誕生したころで、恐らくそのビルの建設過程を表わした科学読物だったと思う。それ以来、高層ビルとか建築物に興味を持ち、一時は建築家や父親と同じ土木技術者を目指したこともある。

本ブログでも、結構古いマニアックな自動車絵本を紹介しているので、そういう方のお役に立てられればと思っているが、ストーリーの断片や挿絵などの記憶を手がかりに、本を探してくれるスペシャリスト「本の探偵」が、大阪府吹田市にある府立児童文学館にはいるという。手がかりは、いつ頃その本を読んだか▽登場人物の特徴▽ストーリー▽表紙や挿絵▽本の大きさや厚さなど。記事の記者が探偵依頼をすると、どんぴしゃで探し当ててくれたそうだ。こういう芸当が出来るには、専門員や司書の方に高度な知識と経験が必要で、このサービスのおかげで、何十年も思い続けた一冊に再開し、涙ぐむ人も少なくないという。

大阪府立児童文学館
大阪府立児童文学館

しかし、この児童文学館も橋下知事の推進する財政再建施策の中で、今年度末での廃館が決まったらしい。前記事の国立産業技術史博物館の準備資料廃棄の件に続く悲しい現状である。くしくも、同じ万博公園内の施設に関する大阪府の決断というのが興味深い。寄贈者が本の返却を求めているという話もあるが、約70万点の蔵書資料は、府立中央図書館に移管される方針。関係資料が保管継続されるのが、せめてもの救い。ただし、この「本の探偵」のサービスが継続できるかは未定だそうだ。

確かに日本国中、中央政府も含めて財政再建に待ったなしという状況はわかっていても、このような大義名分の下で「文化」がどんどん切り捨てられている現状には不安を覚える。このブログで取り上げている絵本もそうであるが、文化の個々の領域というものは、興味のある人にとっては人生の大きな一部にもなりえる事だが、興味のない人にとっては全く価値のない事である。産業史や児童文学なども、興味のない府民にとっては、「なんでそんな無駄なこと、役に立てへんことに税金を使うねん!」ということになる。そういう考え方も否定はできない。ここが文化行政の難しいところである。しかし、そういう一見無関係に思える個々の文化の重層や関係性によって、我々の社会は成り立っているのであり、社会の役に立たないという理由だけで、抹殺するといった行為は暴挙でしかないと私は思う。文化の多様性にどれだけ寛容さを示せるかが、その国の社会や市民の懐の深さのバロメータといえるだろう。別に大阪府民の民度が低いといっているのではなく、博物館のことも文学館のことも、日本のどこでも同じような結論になっただろう。それが今の日本の現実である。

余談ではあるが、「ニュービートルくんとたびにでよう!」で紹介した新人絵本作家の登竜門、日産自動車が開催する「ニッサン童話と絵本のグランプリ」は1984年に大阪府立児童文学館の開館を記念して創設された。この問題、自動車業界とも関係があったのだ。日産は協賛であり、主催は大阪府立児童文学館となっている。主催者の廃業が決まった今、経営不振の続く日産も協賛から降りてしまうのであろうか。継続が危ぶまれる。

私は児童文学館の運営実態をよくは知らないが、冒頭の素敵なサービスを実施しているにも関わらず、来館者がきわめて少ないという。立地条件の悪さもあると思うが、よくよく調べてみると、この文学館では図書の貸し出しおよび閲覧制限があるようだ(対象範囲の詳細不明)。学術的価値の程度はわからぬが、肝心の子どもたちが読めないのであれば、府民たちはあまり恩恵を受けないだろう。文学館のこのような運用実態であれば廃館もやむなしか。

横須賀市立図書館返却ポスト(横須賀中央駅)
横須賀市立図書館返却ポスト(横須賀中央駅)

昨日行った横須賀市立児童図書館は、築35年の老朽化した施設(つい最近、児童図書館を含めた横須賀市立新中央図書館の建設計画が打ち出されるも財政難で凍結、残念!)であるが、利用者は結構多かった。駅前の立地条件のよさもあるが、児童図書館も含めた横須賀市内にある複数の図書館は、どこで借りてきても市内の京急線7駅に設置した専用ポストと有人改札口で、図書館の本の返却ができ、これが大変便利だ。公的機関といえども、利用者を増やすための知恵と工夫は必要だ。

文学館の統合先、府立中央図書館では、「本の探偵」サービスも含めて、府民に喜ばれる管理・運用を期待したい。しかし、中央図書館への移管にも多額の経費がかかってしまう。くれぐれも、その経費を削減するために産業史博物館の件のようなゴミとして廃棄するような暴挙だけは謹んでもらいたい。

[参考・引用]
[1]「本の探偵」に依頼 大阪府国際児童文学館、2009年4月18日、毎日新聞
[2]ニッサン童話と絵本のグランプリ、大阪府立児童文学館ホームページ、
http://www.iiclo.or.jp/07_com-con/02_nissan/index.html
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