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楽しいクルマ絵本の世界/エンスーのためのクルマ絵本ライブラリー

「わんぱく天国」は花見処  

わんぱく天国

昨日、自宅の裏山の塚山公園というところに久しぶりに家族で花見に出かけた。子供の足で自宅から15分足らずの所だ。朝から妻はお弁当を準備し、ビール片手にまったりと昼時を過ごす。天気もほどよく、七、八分咲きといった花見日和だった。

神奈川県立塚山公園は「かながわの景勝50選」に選ばれるほど桜の名所として有名で、ソメイヨシノをはじめ数種類の約千本の桜がある[1]。満開時にはあたり一面ピンク色のグラデーションに染まりほんとうに美しい。徳川家康に仕え、この地に領地を与えられた英国人武士、三浦按針(ウィリアム・アダムス)夫妻の慰霊碑が置かれているのもこの公園内だ。また、日本のファンタジー童話の元祖、「だれも知らないちいさな国」シリーズ(コロボックル物語といった方がご存知の方も多いかもしれないが)の作者、佐藤さとる氏が書いた「わんぱく天国~按針塚の子どもたち」の舞台となったのも、この塚山公園周辺である。

塚山公園の桜

私は若い頃から終の住処は海を見下ろせて、裏手が山になっている高台に暮らしたいと思っていた。というのも、学生時代に故郷福岡にある能古島(のこのしま)を訪れた際、晩年この島に居を移した作家、檀一雄の旧宅(「月壺洞(げっこどう)」と名付けられていた)のあった地がまさにそのような環境で、博多湾を見下ろす絶景の場所だったのである。結局、私は7年前に今住むマンションを購入したのだけれど、眼下に横須賀港を見下ろし(見えるのは軍艦でちと風情はないが)、裏手には塚山公園という緑豊かな自然に囲まれた、理想に近い環境が気に入ったのが理由である。

塚山公園の桜その2

この地に住むと決まってから、安針塚(現在は最寄の京浜急行駅名も旧“按針塚”から“安針塚”に変わっている)という土地をいろいろと調べていた。そこで、10歳まで横須賀逸見(へみ、安針塚の隣駅)に在住していた佐藤さとる氏が、按針塚を舞台とした童話を書いていることを知る。私自身、コロボックル物語の存在は認識していたが、佐藤氏の作品は読んだことがなかった。でも、恐らくコロボックル物語も含めて、佐藤さとるの作品は彼の子供時代の原体験、塚山公園周辺の自然体験がベースにあるのだと勝手に思い、早く安針塚に住みたいと思ったし、愛読者も多く見られる「わんぱく天国~按針塚の子どもたち」を手に取って読んでみたいと思った。

すでに絶版となりなかなか手に入らなかった「わんぱく天国」であったが、ほどなく古本を入手することができ、一気に読み終えた。もちろん、名コンビである村上勉氏の挿絵版である。逸見地区の子どもたちの物語と想定されるが、戦前の、しかも軍港横須賀が舞台だけに、戦争という時代背景も物語の重要な伏線となっている。子供たちの遊び、遊び場がふんだんに出てきて、戦前遊びの貴重な資料的一面もあるが、めんこや凧揚げ、虫捕りに基地遊びなどに興じていた私から上の世代、昭和の元少年たちには懐かしく思われる物語ではないだろうか。

また、この地独特の谷戸(やと)と呼ばれる地形、それに伴う町のつくりの風景描写も細かく、この土地に住むもの以外には興味深いのではないかと思う。主人公カオル少年も、柿の谷(やと)に家がある。「道のわきには、小川があり、道はやがて石段につながる。(中略)そして、石段をのぼって、いちばんはじめにある左側の家が、カオルの家だった。まさきのかきねにかこまれた、小さい家だ。庭は、鈴木さんの家の屋根の高さにあり、うらは崖になっている。その崖の上には、杉浦さんの家がのっている。一郎という六年生がいて、このあたりのがき大将だ。その杉浦さんのうらは山をせおった深い竹やぶである。」(本文引用)

谷戸(吉倉地区)
谷戸(吉倉地区)

横須賀市のガイドによれば、谷戸とは「市の北部地域は、枝分かれした幾つもの丘陵が海岸線近くまで延びていて、平地に乏しい。丘陵は、決して高くはないが、急傾斜である。丘陵と丘陵にはさまれて幾条もの谷が走る。この谷あいを谷戸と呼び、そこに密集して人家が軒を連ねる。横須賀ならではの風景である。」とある[2]。この入り組んだ人家配置も、冒険・探検好きな子どもたちにはたまらないシチュエーションにちがいない、と昭和の元少年は思うのである。私も、ここに移って来た当初は、逸見や吉倉町の谷戸をよく散策した。どこに続くかわからない石段を登っていくとそこは行き止まりだったりして、塚山公園と谷戸を結ぶ道はまさに迷路のような土地だ。

ゲームばっかりの平成の子供たちに、この「わんぱく天国」はどう写るのだろう。今度小学四年生に上がる長女に聞いてみても、花見以外に塚山公園に遊びに来ることはほとんどないと言う。私の子供時代であれば、格好の遊び場だったのになあ。

でも、少なくとも安針塚周辺で生まれ育った平成の子どもたちには、この土地の文学とでもいえる「わんぱく天国」や「だれも知らないちいさな国」は是非読んでほしいと思う。そして、子どもたちにはこの安針塚の森にもっと触れてもらいたい。

[参考・引用]
[1]県立塚山公園、横須賀市観光協会、
http://yokosuka-kanko.com/kanko-kyokai/sightseeing/052_tsukayama-park.html
[2]谷戸風景、DeepCity Yokosuka、
http://blog.goo.ne.jp/tivgdtd/e/b0488933739446b33d7eb52b352f79e2

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Posted on 2009/04/05 Sun. 08:53 [edit]

category: Yokosuka/横須賀

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