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楽しいクルマ絵本の世界/エンスーのためのクルマ絵本ライブラリー

パトカーぱとくん  

パトカーぱとくん

今回紹介する絵本も、先の「チョコレートのじどうしゃ」のように絶版本でなかなか手に入らなかったもの。先月やっと重刷(第3刷)となった「パトカーぱとくん」(渡辺茂男・作、山本忠敬・絵、福音館書店、英訳本は“PATOKUN, The Little Patrol Car”)。またすぐに品切れになる前に早速購入を決めた。渡辺・山本の黄金コンビの筆による昭和のパトカーたちの活躍が、ちょっと古い大人にはノスタルジーを感じさせる。勿論、子供たちにも楽しい絵本だ。

ある町の警察署。そこには、パトカー1号(トヨタ・クラウンS40型)と覆面パトカーのパトカー2号(車種不明)と、スポーツパトカーのスポーティー(マツダ・コスモスポーツ)、白バイのいだてん1号、2号(カワサキ・カワサキメグロ500)、そして主人公のちびっこパトカー、ぱとくん(スバル360)が配属されていた。

署長さん命令で、パトカー1号は市内の交番を巡察、パトカー2号は待機、事件発生の際に現場へ急行、スポーティーは高速道路パトロール、いだてん1号、2号は市内道路の交通違反取締り、そしてぱとくんは団地のパトロール。「また団地か。」とぱとくん。それぞれ任務に特徴のある他のみんなが羨ましく、ちびで格好も悪く、あんまり強そうじゃない自分が悲しくなった。こんなところは、「しょうぼうじどうしゃじぷた」のパトカー版といったところ。でも、その「団地」で起きた事件でぱとくんが大活躍する。

昭和44年当時の私の住んでいた団地
昭和44年当時の私の住んでいた団地
出典:http://www.kita9.ed.jp/koutoku-e/40th/enkakusi/enkaku_p7.pdf

「団地」。これぞ昭和の響き。高度経済成長による「核家族化」が始まった一つの象徴が「団地」であった。私もこの本が「こどものとも」158号で初版となった1969年は団地に住んでいた。1950年代半ばから建設の始まった公団住宅は、高度経済成長真っ只中の昭和40年代前半が建設のピークの頃ではなかったろうか。私の住んでいた団地は、当時の四大工業地帯、北九州工業地帯に属する北九州市小倉に建設された。当時は確か九州最大のマンモス団地といわれていたと思う。汚い戸建て社宅から引っ越してきたこともあり、出来立てほやほやのキッチンやトイレ、お風呂に「わーきれい!」と歓声を上げていた思い出がある。そんな団地を巡回するぱとくんの描写は私にとってどれも懐かしい。

周りは一面田園地帯だった(昭和43年頃)
周りは一面田園地帯だった(昭和43年頃)
出典:http://www.kita9.ed.jp/koutoku-e/40th/enkakusi/enkaku_p7.pdf

幼稚園から帰ってこない団地の子供がいるとの連絡が警察に入るのが、幼稚園を出てから8時間後。今ではあり得ないが、このストーリーも私には非常にリアルだ。近代的な団地の周辺には、田舎の香水かぐわしく、まだ多くの田畑が残るアンバランスさも、この時代の一つの風景であった。まさに今の中国がダブって見える。私の通っていた幼稚園と団地の間も、山林とはいわないまでも、人気の少ない田園風景が広がっていた。用水路に肥溜め、自動車に人さらい、子供にとっての危険要因は今に劣らず存在していたと思う。でも人々はのんびりしていて、本書の挿絵にもあるように子ども達だけで歩いて幼稚園に通っていたし、外で遅くまで遊んでいてもあまり気にされなかった。

「パトカーぱとくん」一部

この頃までは、古き良き時代の日本が残っていたのであろう。これから先、殺伐とした犯罪や事件、事故が増えていくことになる。

そんな懐かしい昭和の匂いが、クルマたちも含めてプンプンしてくる、レトロ絵本の傑作。パトカーのパトライトの形状も今では懐かしい。1960年前後生まれのお父さん、特に団地族経験者にお勧めの一冊です。

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Posted on 2009/03/25 Wed. 21:57 [edit]

category: picture books about automobile/クルマノエホン

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コメント

パトカーパトくん、小生の幼児期に散々お世話になった絵本です。
同時に同書こそ、「ヒトは他者より地味な存在だからと言って決して惨めでもなければ日陰者と言う事もない―自分に与えられた立脚点を踏み外さず、自らの任務に勤しんでいれば存在を認められ、実りが得られる」と言う古今東西共通の教訓を「乗り物キャラ」に感情移入させつつ子どもたちに知らしめると言う意味で歴史に残る力作ではないでしょうか。
少し前に流行った〽ナンバーワンになれなくてもいい 一生懸命やればいい〽~はあまりにも「ゆとり教育」思想の乱用で、「怠慢と無気力の正当化」であるのと対照的に、そんな「一時の軽薄な流行」を根本より打破する強みを持った「哲学」さえ感じられる渡辺茂男氏こそ昭和日本が生んだ金字塔たる作家に他なりません。
「団地の生活パトロールだけで、同僚たる他のパトカー群のように華やかなスポットライトを浴びれない」彼パトくんは、しかしそれでも地道に毎日を勤め上げ、「彼でなければ出来ない」任務をこなして周囲から評価される.....世の中にはどれだけ多くの「パトくん」的児童が救われ、自らに自信を持ったか計り知れないかと思うに作者と同絵本のもたらした社会的意義は歴史に残るものがあると信じて疑いませんが如何でしょうか?
貴殿も幼少期・青少年期にいじめやからかいの対象になったことがおありでしょうか?もしおありでしたらそうした境遇の者同士と言う事で当方の参考になるエピソードをブログ記事に関連させて取り上げて下されば幸いです。

URL | 真鍋清 #-
2014/05/03 01:54 | edit

Re: タイトルなし

真鍋様、いつもコメントありがとうございます。
いじめられてトラウマになるほど嫌な思いをした経験はないのですが、
ガキ大将にいじめられたことはありますよ。
どのように乗り越えたのか、
いじめに関する自身の体験については以下で取り上げています。
参考になりますでしょうか。
http://ehonkuruma.blog59.fc2.com/blog-entry-191.html
また、私のからかいが原因で殴り合いの喧嘩になったこともあります。
喧嘩には負けて怪我もしましたが、
変化に気づいた母は理由を聞いて相手を責めるどころか、
私を叱り先方の家庭へ一緒に謝りにも行きました。
当時は生徒が自分たちで問題を解決していましたし、
先生も必要とあれば手を上げることもありました。
我々もその行為を納得し反省しました。
親も子供に非があれば当然厳しく叱る。
こういう環境で少年期を後腐れなく過ごせたのも、
子・親・先生の相互コミュニケーションが密だったからだと思います。
いじめは今も昔もありますが、
現代のそれが陰湿に感じられるのは、
このコミュニケーションの差ではないでしょうか。

URL | papayoyo #-
2014/05/05 01:46 | edit

古き良き時代

はじめまして。
古いパトカー(s40クラウン)のことを調べていて、こちらのブログを見つけました。
絵本というのは子供の頃の思い出が強くよみがえるので、私も時々見てみたくなるのですが、この本は見たことがありませんでした。
「また団地か」そんなことをぼやきつつ、自分の役目にひたむきに取り組む「ぱとくん」が、とても可愛く見えて、親しみを感じました笑
何とかして本を読みたいと思います!

URL | いぬがみ #-
2017/06/09 23:55 | edit

Re: 古き良き時代

いぬがみ様、コメントありがとうございます!
「団地」に何か思い入れはありますでしょうか。
私の住んでいた団地の周辺はまだ田舎の風景が残っていて、川魚、虫、トカゲ、ヘビらと遊んだものです。この頃の思い出は団地とともに今でも鮮明に残っていますし、おっしゃるように絵本もまた当時の記憶をよみがえらせるタイムマシンのような機能を持っていますね。
入手しやすくなったので、是非手に取って、ご感想もお聞かせいただけると幸いです。

URL | papayoyo #-
2017/06/10 18:30 | edit

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