You Must Believe In Spring

You Must Believe In Spring

桜もそろそろ咲き始め、早朝の通勤時もすっかり明るくなった。いよいよ冬が終わり、春の訪れである。こんな季節に必ず取り出してくるCDが天才JAZZピアニスト、ビル・エバンスの”You Must Believe In Spring”(Bill Evans:p、Eddie Gomez:b、Eliot Zigmund:ds、Warner・Pioneer)。数ある彼の作品の中で、たかだか十数枚程度しか聴き込んだことがない私であるが、その中で”Explorations”とともに好きな一枚である。「きっと春が来ると信じなさい」とでも訳すのだろうか。タイトル曲も含め、どれもエバンスが美しい旋律を奏でる珠玉の名盤である。

私はいわゆるJAZZフリークではないのだが、このビル・エバンスとの付き合いは大学生の頃からなので、四半世紀以上である。JAZZ暦は、このビル・エバンスと、ハーピスト(ハーモニカ奏者)のトゥーツ・シールマンス(Toots Thielmans)から始まっているので、私の中でのJAZZというと彼らの音が頭に浮かぶ。どちらかというとウェットな黒人JAZZよりもドライな白人JAZZが好きなのだ(キース・ジャレットも大好き)。

Bill Evans
Bill Evans

ビル・エバンスのことを、私ごときがここでとやかく説明するつもりはないが、このアルバムは彼の人生にとって非常に重要な意味合いを持つ。本作の録音は1977年、前年’76年には妻のエレイン夫人が亡くなっており、1曲目の”B Minor Waltz”は彼女へ捧げられたもの。翌年の’77年には、音楽教師だった兄ハリーが自殺している。エバンス本人はその数年後の1980年に亡くなっているが、本作が発表されたのは死後のこと。追悼盤としてである。4曲目”We Will Meet Again”はハリーへの追悼曲となっているが、自らの死も予感していたようなタイトルである。

以上、本作には暗い影が付きまとい、エバンスが逆境に苦悩しながらの作品だったのだろうと想像できる。しかし、彼の結論は”You Must Believe In Spring”、「きっと春が来ると信じなさい」というポジティブシンキングに行き着いた。と私流に解釈。

どんなに苦しく、悲しいことがあっても、季節の変化のように、いつかは春が訪れる。自然に身をまかせ、その時が来るのを信じなさい。そういう風に考えれば、「死」すらも自然の摂理として受け止められる。「死」は終わりでなく、新しい「生」の始まりだ。輪廻転生のような世界観。彼自身もがき苦しんだ末の光明、暗がりの中に、暖かく、美しい一筋の光が差し込んだ、そんな印象を持つアルバムだ。

私は何かふっきれた感のある、明るいメロディのワルツ、6曲目の”Sometime Ago”がお気に入りだが、7曲目、朝鮮戦争を舞台にしたコメディ映画”M*A*S*H”(’70年、米、Robert Altman・監督)のテーマも、非常にいい曲だ。タイトル曲は、繊細さと力強さを合わせもったエバンス・トリオのコラボレーションが美しい。

ロシュフォールの恋人たち
「ロシュフォールの恋人たち」の一場面

”You Must Believe In Spring”は、ミュージカル映画「ロシュフォールの恋人たち」(’67年、仏、原題”Les Demoiselles de Rochefort”)のために、詞をジャック・ドゥミ監督(Jacques Demy)が、曲を巨匠ミシェル・ルグラン(Michel Legrand)が書いた作品に、バーグマン夫妻(Alan & Marilyn Bergman)による英語の歌詞とタイトルをつけたもの。参考に英詞[1]と訳詞[2]を掲載しておこう。

全曲が秀逸のこんな美しいアルバムにはそうめったに出会えるものでない。「クルマの絵本」の情報を得ようと当方ブログに訪れた方、これも何かの縁です。一度聴いてみて下さい。出口の見えない経済不況、来年度の小遣いも大幅カット間違いなしのこの暗いご時勢にこそ、このアルバムを聴けば、いつか春が来るのを信じられるかも。

春が訪れたら、またこのアルバムを聴きましょう。
We will meet again, Mr.Bill Evans.

Bill Evans その2

[付録]
You Must Believe In Spring
作曲:Michel Legrand
作詞:Jacques Demy
英訳詞:Alan & Marilyn Bergman([1]より引用)
和訳詞:[2]より引用

When lonely feelings chill    
The meadows of your mind,   
Just think if Winter comes,   
Can Spring be far behind?

Beneath the deepest snows,  
The secret of a rose       
Is merely that it knows      
You must believe in Spring!   

Just as a tree is sure      
Its leaves will reappear;     
It knows its emptiness     
Is just the time of year     

The frozen mountain dreams
Of April's melting streams,
How crystal clear it seems,
You must believe in Spring!

You must believe in love
And trust it's on its way,
Just as the sleeping rose
Awaits the kiss of May

So in a world of snow,
Of things that come and go,
Where what you think you know,,
You can't be certain of,
You must believe in Spring and love

孤独が君の心を凍らせるとき
こう考えるのはどうだろう?
春も巡り来ぬはずはない、と

深い雪に覆われた大地は既に
薔薇のつぼみを隠している
ただそれさえ分かっていれば
君は春を信じることが出来る

木の葉がやがて芽吹くことは
森の木々たちには当然のこと
君の心に巣食う虚しさも
単に季節の一コマに過ぎない

雪に閉ざされ凍てついた山も
四月の雪解けを夢見つつ眠る
その澄んだ流れを想えば
君は春を信じることが出来る

君は愛を信じることも出来る
愛の訪れを信じていなさい
五月の口づけを待ちわびつつ
今は眠る薔薇の花々のように

雪の世界では
全てが流転する
君に分かることなど何も無い
たとえ確信は持てなくても
春と愛のことは信じて欲しい



[参考・引用]
[1]http://www.sing365.com/music/lyric.nsf/You-Must-Believe-in-Spring-lyrics-Maureen-McGovern/AC18F7D51CEA8BA648256EFB000BBFE2
[2]YOU MUST BELIEVE IN SPRING、2008年2月20日、W&R : Jazzと読書の日々、
http://d.hatena.ne.jp/wineroses/20080220

You Must Believe in SpringYou Must Believe in Spring
(2003/10/27)
Bill Evans

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ExplorationsExplorations
(1991/07/01)
Bill Evans TrioScott LaFaro

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[ 2009/03/20 20:06 ] music/音楽 | TB(0) | CM(0)

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