チョコレートのじどうしゃ

チョコレートのじどうしゃ

私は基本的に辛党なので甘いものにはあまり関心がない。でもチョコレートだけは好きだ。今回はそんなチョコレートでじどうしゃを作ってしまうお話、「チョコレートのじどうしゃ」(立原えりか・作、太田大八・絵、チャイルド本社)を紹介する。チョコレートを題材とした児童書は、映画にもなっている「チョコレート工場の秘密」(ロアルド・ダール・著)が有名であるが、本書はクルマノエホンである。

初版は1984年にひさかたチャイルドから出ており、その後絶版となっていたものだが、2007年にチャイルド本社から「おはなしチャイルドリクエストシリーズ」の一冊として復刊した。私も気にはなっていた絵本だったので、さあて注文しようと思っていたら、復刻版もあっという間に絶版となってしまった。で、最近この復刻版をヤフオクで手に入れたという訳だ。欲しいと思ったらすぐに購入しないと、本はすぐに絶版となってしまう。

ストーリーはこうだ。ある大きな町に「いばりん」という、いつもいばっている大金持ちがいた。彼は金持ちは偉いと思っているチョコレート好きの男だ。ある日、大好きなチョコレートを食べながら、「金持ちは偉いのだから、町中の人から知られるほど有名にならなければならない。」と考えた。そのようになるにはどうしたらよいか考えてみたが妙案が浮かばぬ。そこで何でも知っている召使いを呼んだ。

「チョコレートのじどうしゃ」その1

彼は銅像を作って建てればいいと提案した。いばりんはその提案に納得したが、その素材が気になった。金(ゴールド)で作れば 泥棒が盗んでしまうと思ったからであった。そこで召使いは、主人の大好きなチョコレートで作った銅像を再提案する。それも自動車に乗ったやつを。

いばりんは、早速チョコレートのじどうしゃに乗った自分の大きな銅像を彫刻家たちに作らせた。でも彼らはチョコレートの甘い匂いに勝てずにチョコレートをたくさん食べてしまう(確かに挿絵を見ているだけでチョコレートが食べたくなる)。その結果、じどうしゃは出来たけれど肝心な「いばりん」を作ることができずに、金持ちいばりんの怒りを買う。

「チョコレートのじどうしゃ」その2

この様子を伺っていたチョコレートのじどうしゃは、いばりんぼうの男を乗せて飾られることがいやになり、そうっと逃げていった。さて、チョコレートのじどうしゃの運命やいかに?後半は、チョコレートのじどうしゃが意志をもって逃げ回る愉快な絵本だ。

皆さんの周りにも「いばりんぼう」はいませんか?精神科医の故・斎藤茂太さんの「いばりんぼうの研究と対策」(WAVE出版)によると、いばりんぼ=劣等感と自己顕示欲が入り交じった人たち、と定義している[1]。「いばりん」が「町中の人から知られるほど有名になりたい」と考えたのは、自分は誰からも知られていない一人ぼっちの存在だという劣等感を持つ、実はかわいそうな男で、その反動から自分を知らしめたいという自己顕示欲が突出してしまい、このような行動に出たと考えられる。

いばりん
いばりん(「チョコレートのじどうしゃ」より)

誰もがコンプレックスは抱くもの。でもその不安な感情をうまくコントロールできずに、負の方向にどんどん落ち込んでいくのが「うつ」の状態、劣等感を打ち消そうと自己顕示欲や攻撃性が増した情動が「いばりんぼう」なのであろう。劣等感をばねにして、相手を思いやる、向上心を持つといった正の方向へ転換できるのが一番よい感情コントロールの形なのだろうけど、これがなかなか難しい。

まだ純真な子どもの頃に本書を読めば、チョコレートのじどうしゃにも嫌われる「いばりん」みたいにはならないようにしようといった素直な感想になるのだろうけど、年月を経て経験を積み、人生の機微に触れ、いろいろな不安も増えてくると、なにか同じ中年の同志のように、一概に「いばりん」のような存在も否定できないなと思う自分に気付く。

立原えりか
立原えりか

作者の立原えりかさんは、童話、ファンタジー作家。1937年、東京に生まれる。高校生のころより童話を書きはじめ、1957年に「人魚のくつ」を自費出版。同作品で日本児童文学者協会新人賞を、1961年に「ゆりとでかでか人とちびちび人のものがたり」で講談社児童文学新人賞を受賞。1970~77年「立原えりかのファンタジーランド」全16巻を青土社より出版。主な作品は、上記受賞作のほか、「月と星の首飾り」「月あかりの中庭」(講談社文庫)、「およめさんはステゴザウルス」(岩崎書店)など。現在は「アンデルセンのメルヘン大賞」(タカキベーカリー主催)選考委員長、日本通信教育連盟「立原えりかの童話塾」塾長、「ヒースランド」編集長を歴任されている[2]。

シャープな筆遣いで味のある挿絵を描いた太田大八氏については、既出「うちのじどうしゃ」を参照されたい。

[参考・引用]
[1]いばりんぼうの研究と対策、2004年8月18日、日々の生活から起きていることを観察しよう!!、
http://kazuyomugi.cocolog-nifty.com/point_of_view/2004/08/post_1.html
[2]立原えりか、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AB%8B%E5%8E%9F%E3%81%88%E3%82%8A%E3%81%8B

チョコレートのじどうしゃ (おはなしチャイルドリクエストシリーズ)チョコレートのじどうしゃ (おはなしチャイルドリクエストシリーズ)
(2007/02)
立原 えりか太田 大八

商品詳細を見る


チョコレート工場の秘密 (児童図書館・文学の部屋)チョコレート工場の秘密 (児童図書館・文学の部屋)
(1972/09)
ロアルド・ダール

商品詳細を見る


いばりんぼうの研究と対策いばりんぼうの研究と対策
(2003/02)
斎藤 茂太

商品詳細を見る
スポンサーサイト

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://ehonkuruma.blog59.fc2.com/tb.php/165-fd4a778f