ロンドンタクシー

きいろいオースチン・FX4タクシー

イギリスはロンドンに行った方が必ず目にするのが、真っ赤な2階建てバスと、黒く背高のロンドンタクシーである。現在のロンドンタクシーのルーツは、1919年にRobert‘Bobby’Jonesが設立したコーチビルダー(車体製造会社)、カーボディーズ社(Carbodies)に遡る。

1940年代の終わりには、カーボディーズ社はタクシーの車体製造に活動分野を広げていた。1930年代くらいまで細々と運行し続けていた馬車タクシーは、第二次大戦後、全面的に廃止され、1947年にロンドンのタクシーは自動車のみに統一された。これにより正式にロンドンタクシー、いわゆる“Black Cab”が誕生する。

Austin FX3
Austin FX3

1948年に、マン(Mann)とオバートン(Overton)両氏の共同出資で、カーボディーズ社の製造によるオースチンバッジのモデルFX3が登場、タクシー市場を占有する。戦前のイギリスでは、いくつかのメーカーが旅客輸送専用の自動車を生産していて、オースチン社(Austin)もそうしたメーカーの一つだった。2.2リッターのガソリンエンジン(56年にディーゼルも登場)を積み、最高出力は52ps(最終的には68ps)、とても高い耐久性を持ち、補修もし易い設計で、1958年まで使用され、生産台数は7,000台に達した。

1958年に次期型モデルFX4を投入。FX3に対して乗降ステップが消滅、車幅を広げた。頑丈な箱型断面のセパレートフレームに載る観音開きの4ドアサルーンボディもカーボディーズ社の製造による。小回りが利くのも大きな特徴で、最小回転半径は3.8mと驚異的に小さい。パワートレーンはBMCの2.2リッターディーゼルと4速MTの組み合わせだが、3速ATもオプション設定された。最高出力は60ps。

LTI FX4

1973年にマンガン青銅ホールディング有限会社(Manganese Bronze Holdings)がカーボディーズ社を買収、1979年にはオースティン社がカーボディーズ社に車の生産権を譲渡。1982年にカーボディーズ社がオースチンの後身であるブリティッシュレイランド社(British Leyland)からFX4の知的財産権を獲得、1984年に、マンガン青銅ホールディング社がマン&オバートン社を買収し、新生LTI社(London Taxi International)となってロンドンタクシーの自主開発をするようになった。1989年にLTI社が新型のFX4「フェアウェイ」を投入した時に、エンジンは4速ATと組み合わせた日産の2.7リッター・ディーゼルエンジンに切り替えられた。このモデルFX4は長く愛され、1997年まで生産された。

LTI TX1
LTI TX1

そして’97年からは新型モデルTX1が投入された。キープコンセプトながら、乗り心地も向上し、安全性、利便性も高くなった。エンジンは引き続き日産の2.7リッター・ディーゼルエンジン。2000年にはタクシー市場の8割をLTI社が占め、名実ともにロンドンのみならず、イギリスを代表するタクシー会社となっている。タクシー会社といっても、あくまで車両製造会社であり、日本のような輸送業であるタクシー会社とは異なる。[1]によれば、ロンドンのタクシーは基本的に個人タクシー(個人営業)なのだそうだ。車両もほとんどが運転手の個人所有で、ロンドンに3社ある大手無線タクシー会社と契約をしているとのこと。

また、“Black Cab”と言われるようにロンドンタクシーには黒塗りのイメージがあるが、現在は赤、青など様々な色があるそうだ。冒頭の写真は絵本と同じFX4モデルの「きいろい」タクシーだ。

FX4の室内
FX4の室内

FX4モデルは、運転席と客席が隔壁で仕切られており、後部座席に3人座れるほか、隔壁に折りたたみ式の座席が2席付いていて後部座席に対面して座れ、最大5人乗れる。全高は1,800mmと車椅子のままで乗車が可能だ。写真は、その昔私がロンドン出張の際にFX4の車室内を撮影したもの。室内は驚くほど広く、床はフラットだ。ドアも観音開きで荷物の出し入れ、乗降がしやすい、きわめてバリアフリーな設計となっている、[2][3]によれば、TX1のバリアフリー性能も高い。車体左側には車椅子用のスロープが標準搭載されている。これにより、ロンドンは、世界で唯一の100%車椅子対応のタクシーを導入した都市となった[4]。手すりが黄色いのは、視力の弱い老人などにも目立ちやすくするためだ。リアシートにはチャイルドシートも組み込まれている。

日産クルー(上)とトヨタコンフォート(下)
(上)日産クルー(下)トヨタコンフォート

日本の自動車会社も、トヨタ「コンフォート」や日産「クルー」などタクシー専用車を開発・販売しているが、ここまで徹底したユニバーサルデザインは考慮されていないと思う。ロンドンタクシーの概観と比較してみると、極めて普通のクルマだ。

LTI TX2 LTI TX4
(左)LTI TX2(右)LTI TX4

その後、TX1はフォード製エンジンのTX2(2002年)、VWモトーリ製エンジンのTX4(2006年)とマイナーチェンジ、現在に至る。最近の話題でいうと、LTI社の親会社であるマンガン青銅ホールディング有限会社(MBH)は、中国の吉利集団、上海華普汽車公司と合弁で会社を設立、上海でTX4を製造するそうだ[5]。アジア生産が開始されれば、日本でも導入しやすくなるかもしれない。

ロンドンに行った時の乗り方だが、勿論日本と違って自動ドアではないので、自分でドアを開け、自分で荷物を詰め込み、自分でドアを閉める。降車時には、まずタクシーを降り、ドアの横に立って運賃を支払う[6]。郷に入っては、郷に従い、ちょっと紳士になったつもりで利用してみましょう。

[参考・引用]
[1]ロンドンタクシーの秘密、ビップル事務局部屋、2008年06月21日、
http://plaza.rakuten.co.jp/viple/diary/200806210000/
[2]新型ロンドンタクシー「TX1」、東京ハンディキャップ連絡会、
http://www.tokyo-handicab.net/LondonTaxi.html
[3]【ロンドンタクシーTX1 Vol. 2】バリアフリー性は抜群!!、Response、2000年10月12日、
http://response.jp/issue/2000/1012/article4872_1.html
[4]海外におけるUDの事例、ユニバーサル・ネット くまもと、
http://www.pref.kumamoto.jp/ud/htm/1-1udken/udtaisho/2007ud_taisho_udoversea.html
[5]英国タクシー「TX4」、上海で生産へ、2007年4月22日、チャイナネット、
http://japanese.china.org.cn/olympic/2007-04/22/content_8346352.htm
[6]ロンドン・タクシーの乗り方、ヨーロッパ三昧 食旅花、
http://www.europe-z.com/tabi/gb_london/a57.html
[7]London Taxi History、
http://www.lvta.co.uk/history.htm
[8]ロンドン・タクシー、
http://www.ne.jp/asahi/happy/jollyboy2/carsp04.htm
[9]ロンドンタクシーの歴史、with London Taxiロンドンタクシーのご紹介、
http://ww6.et.tiki.ne.jp/~goudatakesi/history/taxi-history.html
[10]1976年 オースティン タクシー、名車館、CAZOO.com、
http://gazoo.com/meishakan/meisha/shousai.asp?R_ID=880
[11]ロンドンタクシー豆知識【前編】、ヨーロッパ旅行道場、まにあ道Mania!、
http://www.maniado.jp/community/neta.php?NETA_ID=2034
[12]ロンドンタクシー、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%BC
[13]LTI’s history、LTI社ホームページ、
http://www.lti.co.uk/about/history/
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[ 2009/02/08 11:26 ] cars/車のお勉強 | TB(0) | CM(0)

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