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9番目の戦車  

9番目の戦車

今日は終戦記念日である。一年に一度のこのメモリアルデーに、今年は一冊の絵本を通して、ちょっとセンスティブな話題ではあるが、私なりに「戦争」を少し考えてみた。今回紹介する絵本は「9番目の戦車」(ときたひろし・作、PHP研究所)である。戦車?クルマの絵本には場違いな気もするが、紛れもない特殊車両(クルマ)である。ある意味、クルマ絵本の珍本である。原爆などの戦争を扱った絵本は知っているが、戦場を、しかも戦車をここまでストレートに扱った絵本は、この本以外に私は知らない(戦前、戦時中は国威高揚のための軍事絵本はあったと思うが、戦後、このようなテーマを扱った絵本は極めて珍しいと思われる)。

「9番目の戦車」一部

主人公は、第二次大戦中、南の島にやってきた戦車一個小隊9台の戦車兄弟の末っ子、タンクロウ。この戦車に乗り込む兵隊さんは、車長さん、銃手の中村さん、そして操車のジンゴ。すでにこの島も、敵の軍艦に包囲され、米軍新型戦車部隊も上陸している。この戦車兄弟は、日本で戦うため、港からこの島の脱出を図ろうとしている。しかし、その前に立ち塞がるのは、無数の敵戦車部隊であった…。戦局も末期、数ある南方の玉砕島の一つがモデルであろう。戦車の描写は緻密、砲弾の直撃や機銃掃射の表現など、絵本にしてはかなりリアルに戦闘場面が描かれている。

作者のときたひろしさんは、自身のHPによると、1967年宮城県生まれ。以前は警視庁の刑事で、警視庁時代は、特別訓練を受け拳銃上級試験をパス、都内有数の繁華街を持つ警察署を転々とし、警視庁総監賞受賞歴は計3回のつわものだ。平成15年に警視庁を退職し、つくば山麓に居を構えて、絵本作家になったという異色の経歴を持つ。「9番目の戦車」は、絵本作家としてのデビュー作で、日本人として価値ある「心」を見出すきっかけとなる、笑いと、感動と、涙で、世代をつなぐ絵本作りを信条としているそうだ。

この本は子どもにはまだ読み聞かせをしていない。戦闘描写があるのと、なによりもどのように話をしてよいものか迷いがあるからだ。とはいっても、テレビのニュースではイラク戦争やテロ、最近のレバノン情勢など、否応なしに戦争・戦闘の映像が、それもかなり過激な現実が目に飛び込んでくる。まさに雨、あられのように。当然、娘も「あれはどうしたの?」と質問してくるので、悲惨な事実をそのまま伝えている。家からはアメリカ海軍基地が見え、アメリカ人から英語を学んでいる娘であるが、彼らと昔戦争をしていた事実も教えている。戦争の概念はだいたいわかっているようだが、どこまで本質を理解しているかはわからない。まあ、戦争を経験したことがない私ですら、ニュースから流れる映像は映画のようにフィクションではないかと思える程度なのだが。

私も戦中派の父や母から、子どもの頃戦時中の話を何度か聞いた。東京大空襲の恐怖と悲惨さ、人の焼ける臭い、機銃掃射を受けたことと、その戦闘機のパイロットの顔がよくみえたこと等々。事実にもとづく話、特に体験は、なによりも重く心に残るものだ。戦争体験をもたない我々世代は、少しでも客観的に正確な事実を選択、理解すること、そしてその事実の本質を子どもたちに伝えることが重要だと思う。たとえば、南京事件での虐殺数が多いの少ないので日中間、思想間の論争が絶えない。ユダヤ人虐殺でも何百万人といった数がすぐに話題となる。私にしてみれば、ナンセンスな論議である。問題は数ではない。一人であろうが、百万人であろうが、事の重さに変わりはない。本質は、戦争は人間を狂気に変えるということだ。それは誰でもなり得るということだ。イラクでも、アメリカ軍の捕虜虐待問題でそれは再び証明されている。

また、最近突如教育の場で論議されている「愛国心」なるものも非常に胡散臭い。藤原正彦のいう四つの愛の定義[1]は、比較的共感できるが、国を愛すること以前に、家族を愛すること、人を愛すること、生まれ育った地域や自然を愛すること、また日本人として自信をもてることが重要だろう。これらが培われれば、自ずと自分の国は好きになる。それに外国も好きになる。ましてや、こういうことを国の法律のもとで強制的に教わる必要はない。親がきちんと教えます。

こんなことを考えていたら、この本の子どもへの読み聞かせにも少し自信がでてきた。もう少し、歴史を勉強しよう。非現実世界の戦争シミュレーションゲームに比べたら、これほどリアリティのある優良な教材はないではないか。子どもというのは賢い生き物だ。そのうち、自ら本質を理解するようになるだろう。明日は妻の実家に帰省する。実家には、従軍経験者である子どもたちの曽祖父がいる。おじいちゃんにこの本を読み聞かせしてもらったらもっといいんだろうな。

[参考・引用]
[1]国家の品格、藤原正彦、新潮新書、2005



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Posted on 2006/08/15 Tue. 12:56 [edit]

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