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このおとだれだ?  

このおとだれだ?

音・振動論は学生時代、あまり得意な科目ではなかったが、本日はクルマと音の話。クルマの音を題材にした絵本の代表格といってもいいい、今回の「このおとだれだ?」(こもりまこと・作、童心社)を紹介する。登場するのは旧ワーゲン・タイプ1、通称ビートル(リアウインドウとリアゲートの形状から’58-‘64年式モデルか)のブルツくん、ミニ・クーパーのブンブン(同じ作者による「はやいぞブンブン」(童心社)と同じ主人公)、旧フィアット500のプルプルくん(既出「ちっちゃな プルプルくん」の主人公)、初代C1型シボレー・コルベット(‘56年式)のマイクにいさん、そしてフェラーリ275のラリーさん。形や大きさも違うけど、サウンドもみなそれぞれ個性がある。

私は、それぞれのモデルの生音を聞いたことがないので、本書の擬音表現がどれくらいリアリティがあるのか判断はつかないが、非常に個性的なエンジン音が表現されている。エンジンサウンドは、多分にエンジン構造の影響を受けるので、それぞれのモデルのエンジン・駆動形式と、擬音表現を列記してみると、

旧ワーゲン・タイプ1(ブルツくん):空冷水平対向4気筒OHV、駆動方式RR
ババババ バォーッ

ミニ・クーパー(ブンブン):水冷直列4気筒OHV、駆動方式FF
ブンブン ブルルゥーッ

旧フィアット500(プルプルくん):空冷直列2気筒、駆動方式RR
プルプル プルルルー プルンプルン

初代C1型シボレー・コルベット56年式(マイクにいさん):水冷V型8気筒OHV、駆動方式FR
ドルンドルン ドルルルー ドォン ドォン ドドドドドォー

フェラーリ275(ラリーさん):水冷V12気筒 SOHC、駆動方式FR
フォンフォン クオオーッ フォンフォン フォォーッ 

(上記のクルマのエンジン音を録音収集、公開したデータはどこかにないだろうか?)

「このおとだれだ?」その1

こうしてみると、まずエンジン冷却方式に空冷と水冷とがある。エンジン表面を覆うのが水(クーラント)か空気の違いなので、水冷ではエンジン放射音の吸音効果があり、空冷に比べてノイズが少ない。逆に空冷ではダイレクトに音が伝わるはずなので、多少うるさく金属的な乾いた音になる。ワーゲンの「ババババ」や、チンク(フィアット)の「プルプル」は、その辺がうまく表現されているのではないだろうか。

V型と直列型エンジンの音の違いはよくわからないが、上述のワーゲン・タイプ1やポルシェなどの水平対向エンジンは「ボクサーサウンド」といわれるように独特の音響特性を持つようだ[1]。水平対向(フラット)エンジンは、左右のシリンダーが対称に配置(180°)している構造上、エンジン本体から集合部まで排気を導くパイプ、すなわちエキゾーストマニホールド(エキマニ)の左右を同じ長さに調整するのが難しいので、左右から出た排気音が干渉し、特有の音を出しているという。直列、水平といったエンジンそのものの構造からくる音の違いというより、排気管構造による音の特徴だということだ。

VW ビートル 空冷4気筒水平対向エンジン
VW ビートル 空冷4気筒水平対向エンジン

ワーゲン・タイプ1は、このような独特な音を生み出す条件、空冷と水平対向という2つの条件を持つエンジンのため、「ビートル・サウンド」(ビートルズ・サウンドと間違えないように)という愛称で(一部マニアには)人気があるようだ[2]。はっきりいえば、空冷音もボクサー音も一般的な人はうるさいと不快に感じる音なのだと思う。

4サイクルエンジンの図
4サイクルエンジンの図

気筒数によるエンジン音の違いはあるのだろうか。自動車教習の教科書に必ず記載されているように、一般的な自動車用エンジン(レシプロエンジン)は①吸入②圧縮③爆発④排気の4ストローク(行程)エンジンである。この直線運動するピストンをコンロッド(連結棒)を介してクランクシャフト(軸)を回し、回転運動に動力伝達する。この4行程でクランクシャフトは2回転(720°)する。

エンジンの音程、すなわち点火(爆発)のピッチである周波数特性は、1秒当たりのエンジン回転数とクランクシャフト1回転当たりの点火回数の積で表わされる。ところで、上記のクランシャフト2回転で4行程、すなわち1回の爆発(点火)があるので、単気筒だと1回転当たり1/2回爆発することになる。しかし、複数気筒のエンジンで、すべての気筒を同じ行程で動かすと、必ず同じポイント、すなわち540°で爆発してしまい、ぎくしゃくした動きになってしまう。なので、それぞれのタイミングをずらしてバランスをとるのである。4気筒の場合、1気筒目が吸入行程であれば、2気筒目は圧縮行程、3気筒目は爆発行程、4気筒目は排気行程のように。

このように各気筒の行程を均等にばらすと、2気筒であれば、2×1/2でクランクシャフト1回転当たり1回(360°に1回)の爆発、4気筒であれば4×1/2で1回転当たり2回(180°に1回)、6気筒であれば6×1/2で1回転あたり3回(120°に1回)の爆発が起こることになる。これを式に表わすと、

周波数=1秒当たりのエンジン回転数×クランクシャフト1回転当たりの点火回数
つまり、f=(N/60)・(m/2)となる。f:周波数(Hz)、N:回転数(rpm)、m:気筒数

例えば、毎分6000回転で加速している場合、2気筒の場合は100Hz、4気筒の場合は200Hz、8気筒の場合は400Hz、12気筒の場合は600HZとなる計算だ。理論上は、気筒数が多くなるにつれピッチは短くなめらかに、甲高い音になるということだ。数字だけみれば、2気筒の倍音(1オクターブ上)は4気筒、8気筒は2倍音(2オクターブ上)ということもわかる。

本書の擬音表現は気筒数の違いもうまく表現されているのであろうか。直4、FFであるミニ・クーパーは標準的なスペック(我がカングーも同じ)なので、「ブンブン ブルルゥーッ」と極めて王道のクルマ音表現になっている。シボレー・コルベットの「ドルンドルン ドルルルー」は、いかにもアメリカ人が好きそうな下品なV8エンジンの音表現といったところか。V12気筒のフェラーリは、F1エンジンのようないわゆる「フェラーリサウンド」を「フォンフォン」という表現でうまく表わしていると思う。とはいえ、エンジンの音というのは、回転数やエンジンのシリンダー構造(V型、直列、水平対向など)でも変わってくるだろうし、排気系の構造なども複雑に絡むので、理論通りの音響特性というわけでもないだろう。

「このおとだれだ?」その2

本書では峠を駆けるときのスキール音(※)も表現されているが、これも駆動方式によって異なるだろうし、タイヤのサイズやサスペンション形式、アクセルオン・オフ状態の違いでも異なってくるのだろうが、それぞれの条件でどういう音の特徴を持つのかはよくわからない。

音は非常に嗜好性の強いものであり、同じ音でも人によっては官能的な響きに聞こえても、ある人には雑音・騒音の何ものでもないかもしれない。しかしスタイリングと同様、そのクルマの個性、あるいはブランドを表現する一つの重要な特性であることは間違いない。

また、音というのは、記憶にも残る。私は幼少の頃、団地に住んでいたが、父の帰りの時間によく共同駐車場まで母と迎えに行っていた。日も落ち、遠方からは帰宅する数多くのヘッドライトがこちらに向かってくる。車種や色は見分けがつかない。父は当時初代カローラに乗っていたのだが、確かカローラ(もしくはトヨタ)のエンジン音は聞き分けていた記憶があり(ちなみに初代カローラは直4エンジンで、特に特徴的なエンジンでもなかったはずだが)、聞き覚えのあるエンジン音が近づいてくると、父が帰ってきたと嬉しくなったものだ。本書を読んで、クルマの外観だけでなく、これからは音にも注意してみようと思う。

将来、電気自動車が多く普及したときはどうなるのだろう。無音に近いモーター音にも味付けをするのだろうか。以前に電気自動車を運転したことがあるのだが、その優れた加速性を後押しするような「キュイーン」というモーター駆動音がなかなか感動的だったことを思い出す。「日立のモーターがいい音だすんだよねー」といったことになるのだろうか。

ところで、本書は読み聞かせをすると非常に疲れるはずだ。原音に近づけようと試みるエンスーな方ほどね。

(※)スキール音:スキール音(squeal)とは、自動車の発進時に急激な加速をかける事で空転したタイヤから発生したり、ドリフト走行等でタイヤを強引に滑らせた時に発生したりする音である[4]。

[参考・引用]
[1]ボクサーサウンド、いまさら聞けない!?自動車用語辞典、
http://homepage3.nifty.com/KMG/dic/bokusaasaundo.html
[2]ビートルのエンジンと水、CAR特集「フォルクスワーゲン ビートル」、My Favorite Cars、
http://www1.parkcity.ne.jp/h-sugar/index.html
[3]「V12はいい音、と言われるのはどうして?」、クルマ生活Q&A、webCG、
http://www.webcg.net/WEBCG/qa/engine/q0000019775.html
[4]スキール音、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC%E3%83%AB%E9%9F%B3

このおとだれだ? (とことこえほん)このおとだれだ? (とことこえほん)
(2006/08)
こもり まこと

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Posted on 2008/08/31 Sun. 18:17 [edit]

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