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こうもり傘に4つの車輪 シトロエン2CV  

シトロエン2CV

前回、2CVは“deux chevaux(ドゥ シュヴォー)”=「2頭の馬」の略で、2馬力という意味と書いたが、若干正確さを欠いていたので補足しよう。フランス語で「馬力」の技術用語は“Cheval-vapeur”。 “cheval”は馬の単数形、“vapeur”は蒸気という意味だ。一般に使われる馬力の単位PSはドイツ語のPferderstärk(馬の力)の略。フランスを含む欧州では、自動車税として馬力課税制度をとっている国が多い。これはエンジンの排気量を元に換算して課税率を決めたものである[1]。フランスでは、この課税率はいくつかカテゴリー分けされている。2CVの発表当時のモデルの排気量が375ccと、最も低い課税カテゴリー2CV(400cc未満)に当てはまるように設計されていたため、そのカテゴリー名“2CV”がそのまま車名となったという訳[2]。でも、出力は2馬力ではなく、実際は9CV(HP)。後年排気量がアップして、税制上カテゴリー3CVとなったが、名称は2CVのままだった[3]。ということで、2CVは正確には“deux chevaux vapeur”の略で、広く一般に使われている“deux chevaux(2頭の馬)”は愛称ということになる。ちなみにフランスや英国では、上記のような自動車関連税制は既に廃止されている[3]。羨ましい。

さてこの2CVの誕生を紐解いてみよう。話は第2次世界大戦前の1936年に遡る。戦争の気配が漂うヨーロッパでは未だ高級車が主流。日常の足として使える大衆車はまだほとんど存在しなかった。そのような背景の中、シトロエンは広範な市場調査をした結果、フランスの国民車計画を決定、研究を開始する。

Pierre-Jules Boulanger
Pierre-Jules Boulanger

当時のジェネラル・マネージャー、ピエール・ブーランジェ(Pierre-Jules Boulanger)の提示したコンセプトがタイトルに挙げた「こうもり傘に4つの車輪をつけたもの」だった。ここで、前回紹介した2CVのたとえ「傘」が登場する。このコンセプトの具体的イメージは、経済的で、安価で、4人の大人と50kgの荷物を50km/hの速度でできる限り快適に運ぶ というものだった。当時としては非常に高い目標だったが、その後開発は進み、1939年までに250台の試作車が作られる。しかし、その年のナチス・ポーランド侵攻を皮切りに欧州全土は戦争に突入、試作車のほとんどは破壊された。

1948 2CV
1948 2CV

そのような苦境の中でも研究開発は継続され、大戦後の1948年10月、フランス最大のモーターショー、パリ・サロンで2CVは発表された(今年は生誕60周年、祝還暦です!)。しかし、マスコミや観衆はその奇抜なスタイルに驚き、酷評する。「醜いアヒルの子」「乳母車」「ヴィクトリア調のバスタブ」「シトロエンの大いなるジョーク」等々。作者の愛情表現だと思うのだが、「Très Très Loin」の中の「ひとこぶラクダ」の例えは個人的にはまった。あのフロントフェース、ラウンドシェイプの車体はまさにラクダだよね。

ある者は「この『ブリキの缶詰』に缶切りを付けるのか」と皮肉ったそうだが、これが2CVの別のたとえ「缶詰」である。しかし、これらジャーナリストらの反応とは異なり、一般大衆の見る目は違った。基本コンセプトどおりの優れた経済性、機能性に注目したのである。あれほど酷評された車も「走る哲学」とまで言われるようになった。こうして2CVの歴史を知ると、「Très Très Loin」の詩は、ドゥ・シェに対する讃歌のようにも聞こえてくる。

2CV by 今村幸治郎
2CV by 今村幸治郎

2CVは、既に紹介した各国の自動車の普及・大衆化のエポックメイキングとなった車、イタリアのFIAT500や我が国のスバル360に相当するフランス車といってよい。そういえば、映画「ルパン三世カリオストロの城」では、ルパンのチンクと、クラリス姫のドゥ・シェが疾走するシーンがある(2CVの最高速度は55km/hなので、あんなに快走できない?)。その後はフランス本国のみならず、世界各国で大ヒットとなる。日本でも未だにファンは多い。シトロエン画家、今村幸治郎さんの作品にもたびたび彼女は登場する。

1949年に市販化された後は、排気量のアップや、派生車の登場により隆盛を極めた2CVも、1988年にフランスでの生産を終了。1990年にポルトガルのマンガルデ工場の生産を最後に、2CVの歴史に幕が下ろされた。全生産台数は386万8,633台に上る。自動車史に残る大衆車の名車となった[3][5][6]。

[参考・引用]
[1]Tax horsepower、Wikipedia、
http://en.wikipedia.org/wiki/Tax_horsepower
[2]第4回 歴史を飾る名車たち~2CV、シトロエンの歴史、シトロエン・ジャポンホームページ、
http://www.citroen.co.jp/timeline/04.html
[3]シトロエン2CV、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%88%E3%83%AD%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%83%BB2CV
[4]自動車関連税制の現状と課題-道路特定財源としての側面を中心に-、古川浩太郎、リファレンス、2007.8、
http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/refer/200708_679/067905.pdf
[5]シトロエン/プジョー、CAR GRAPHIC選集、1991、二玄社
[6]2CV JAPON.com、
http://homepage1.nifty.com/montecarlo/index-jp.htm
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Posted on 2008/07/27 Sun. 00:59 [edit]

category: cars/車のお勉強

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