I Stink!

今回はせいそうしゃ絵本の米国版”I Stink!(俺はくっせー)”(Kate McMullan・文、Jim McMullan・絵、HapperCollins)を紹介する。ニューヨークの清掃局で働くゴミ収集車(garbage truck)が主人公である。

4歳の息子は清掃車のことを「ガーガーベン」という。小さい頃聞いていた英語教材(SONYのトーキングカード)に清掃車の出てくる歌があった。

“♪We're the garbage men, the garbage men, the garbage men♪”
(俺たちゃ、清掃マン、清掃マン、清掃マン)

彼はこの歌が大好きで「ガーベッジメン」が転じて「ガーガーベン」となったようだ。ガーガーと音もするし、言い得て妙な我が家のみ通じる単語となっている。

I Stink!その1

さて、本書は表紙からしてヤクザな雰囲気。出だしからガラが悪い。それになんだか臭ってきそう。

俺は誰だと思うかい?
ライトはついているし、10本のでっけータイヤもついている。
エアコンはついてない。俺らしくねえもんな。
ハンドルもアクセルペダルもブレーキも、俺には何でも2つついている。全部両側で操作だ。

みんなが寝ている間、夜俺が何やっているか、知ってるかい?
おめえたちのゴミを何だって食ってる。
袋の中を見てみるかい?朝ごはんの臭いがするぜ。
(papayoyo・訳)

I Stink!その2

でもこのテンポがよく、ユーモアに富んだちょっと乱暴な文章がぐいぐいと読者を惹きつける。圧巻はゴミワードのABC。汚らしい挿絵と一緒だ。こんなにも汚いアルファベットがよく思いつくものだ。

Apple cores(リンゴの芯)
Banana peels(バナナの皮)
Candy wrappers(キャンディの包み紙)
Dirty diapers(汚いオムツ)
Eggshells(卵の殻)
Fisf heads(魚の頭)
Gobs and gobs of gum(ねばねばしたガムの食べかす)
Half –eaten hot dogs(半分食べかけたホットドッグ)
・・・
等々、生活臭の漂う英単語の勉強になった。

嫁はこの本を読んで「吐き気がする」と不評。子供たちの反応のいまひとつかな。翻訳本がないので、日本語で読めないのも一因。私は文章・挿絵ともども大変気に入ったのだが、一応全編翻訳してみたので、ドスを効かせて改めて読み聞かせをしてみよう。動画サイトも見つけたので、声色をまねしてみる手もある。そうすれば子供たちの食いつきもきっと良いはず。

ダンゴムシ

子供、特に幼児は本来汚いものに興味をもつものだ。「うんち」や「おなら」といった言葉はすぐに覚える。私の小さい頃も泥んこ遊びが好きだったり、あおっ鼻垂らした汚ねえガキもそこ此処にいた。まだ下水道も整備されておらず、バキューム車が頻繁に走っていた頃で、あの臭いを嫌悪しつつも、何ゆえか近くに寄って覗いてみたくなる対象だった。清掃車もまた然り。その便槽付近にウヨウヨといるダンゴ虫、通称「便所虫」をじっと眺め、触る。彼らは幼児にとって、最初に出会う身近な生物の代表格であった。

振り返って現代、衛生状態が格段に向上し、汚いものが周りから極端に減った。子供たちもみなこぎれいだし、親たちも神経質と思えるくらい子供や自分を不衛生なものから忌避しようとしているように思える。その結果が、電車のつり革を素手で触れないとか、トイレに直接腰掛けられないといった、病的ともいえる潔癖症の人間を生んでいるのではないか。その一方で、「汚ギャル」という言葉が一時流行ったように、ゴミが部屋中に溜まっても平気な人もまた増えているようだ。この衛生面に対する極端なアンバランスさは何なのだろうか。

私は心理学は門外漢なのだが、幼児期の汚いものとの関係性が何か影響を与えているのではないか。どういった心理的メカニズムなのか興味がある。ご専門の方に是非お聞きしたいものだ。

The Theater Posters of James McMullan
The Theater Posters of James McMullan

挿絵のJim(James) Mucmullan氏は1934年、中国青島生まれのグラフィックデザイナー、イラストレーター。合衆国陸軍に従軍した後、美大としても有名なニューヨークのプラット・インスティテュート(Pratt Institute)で芸術教育を学ぶ。1965年から1968年までは「Push Pin Studio」のメンバーであった。この「Push Pin Studio」は、1954年に著名なグラフィックデザイナーのシーモア・クワスト(Seymour Chwast)やミルトン・グレイザー(Milton Glaser)らが設立したデザイン制作会社で、彼らの活動は、60年代のグラフィック界を牽引し、世界中、そして日本においても和田誠他、数多くのイラストレーターに強い影響を与えた[1]。1970年代のJimは多くの雑誌のためのジャーナリスティックなイラストを提供している。また、リンカーン・センター・シアターの多くの劇場ポスターを製作するなど、シアターの主要な芸術家としても活躍している[2][3]。

本文のKate McMullan氏は1947年セントルイス生まれの児童書作家。タルサ大学とオハイオ州立大学大学院を修了後に教師となる。ロサンゼルスとドイツのアメリカの空軍基地での小学校の教諭を経て、1976年にニューヨークで編集者となる。その頃旧姓Kate Hallの名で最初の児童書を出版する。それ以降、若い読者のための多数の著書を世に送り出している。現在は、ニューヨーク大学などで児童書の書き方についても教えている[4][5]。

McMullan夫妻
McMullan夫妻

1976年に結婚したMcMullan夫妻の共著は2008年現在10冊あり、本書”I Stink!“で2002年、児童文学賞として有名なボストングローブ・ホーンブック賞を受賞している。現在、夫妻は一人娘と、2匹の猫、一匹の犬と一緒にニューヨーク市に在住。彼らは夜明けにしばしば清掃車の騒音で目を覚ますそうで、この経験が本書を書くきっかけとなっているようだ[6]。

I Stink!その3

彼ら夫妻のその他の共著には “The Noisy Giant's Tea Party”(1992)、“Nutcracker Noel”(1993)、“Hey, Pipsqueak!”(1995)、“Noel the First”(1996)、“No No, Jo!”(1997)、“Papa's Song”(2000)、“I'm Mighty!”(2003)、“I'm Dirty!”(2006)、“I’m Bad!” (2008)がある。いずれも日本語、未翻訳。こんなに面白いのになぜ?

[2009.10.15追記]
本屋で翻訳版を発見!2009年9月に評論社から出版されていた。邦題は「さあ、たべてやる!」(ケイト・マクマラン・文、ジム・マクマラン・絵、さくまゆみこ・訳、評論社)。プロが訳すと、”I Stink!(俺はくせえ!)”なんて直訳しないんだな。日本語訳で改めて読むと、やはりちょっと吐きそう。さあ、清掃に従事されている方々に感謝しながら、子どもたちに読んであげよう。

[参考・引用]
[1]シーモア・クアスト、ユトレヒト、
http://www.utrecht.jp/person/?p=191
[2]Biography、James McMullan、
http://www.jamesmcmullan.com/frameset_biog.htm
[3]James McMullan、Pippin Properties,Inc.、
http://www.pippinproperties.com/authill/mcmullanj/
[4]Kate McMullan、Biography、
http://www2.scholastic.com/browse/contributor.jsp?id=1695
[5]Meet Kate McMullan、Kate McMullan.com、
http://www.katemcmullan.com/mkmBio.htm

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