トラックのくるまんとおじいちゃん

トラックのくるまんとおじいちゃん

クルマのリサイクルを扱った絵本をもう一冊。「トラックのくるまんとおじいちゃん」(吉永なおゆき・文、吉永さおり・絵、natural life books)を紹介する。

ある日、元気なトラックくるまんは、動けなくなったおじいちゃんトラックに出会う。動けなくなると捨てられちゃうと心配するくるまんに対して、「すてられはしない。へんしんするんじゃ。」とにっこり答えるおじいちゃん。タイヤはみんなが歩く歩道に、からだ(車体)は家を建てる鉄に変身するのだと言う。次の日、おじいちゃんはもういなかった。みんなの歩く歩道に、家を建てるための鉄になったのだ。おじいちゃんはみんなの中で生きている。

「トラックのくるまんとおじいちゃん」その1

前出の「まほうのクルマ工場」に比べると、環境問題を啓蒙する絵本というよりは、ほのぼのとしたストーリーに癒される絵本らしい作品。おじいちゃんトラックの存在がちょっと切ないのだけど、私は本書で「環境」よりも「生と死」の問題をちょっぴり考えさせられた。

物はリサイクルやリユースなどの再利用によって、その存在した証を残すことができるが、人の生きた証とは何なのであろうか。人は子孫を残せば、自分のDNAが引き継がれる。最近の医療の発達により、臓器の移植も可能となった。ノーベル賞も噂される京都大学の山中伸弥教授が開発したiPS細胞(※1)を使えば、人の皮膚細胞から臓器を再生することが可能になるかもしれない。これら生物学的な継承によって、死後も物質的に生きた証を残すことは可能である。しかし、そのことに人としての真の存在意義は見出せまい。

人は生きていく過程で様々な人と出会い、出会った人々の記憶に残る。記憶はその人の姿かたち、においや温もりといった感覚的なものであったり、その人の話した言葉、教訓だったりする。人は生きていく過程で様々な経験をし、それは知識や知恵として人々に伝承される。身近なことでは恋愛経験や子育ての体験。会社の仕事でいえば、成功体験や失敗体験、それらはノウハウやシステムとして共有され、さらに才能があれば大きな業績として、また本や音楽、芸術、発明といった著作物、知財として歴史に刻まれ、社会へ大きな影響を与えるかもしれない。これらレベルの大小はあっても、その出会いや経験を通して、人々は互いに影響しあっている。人や社会に与えた影響という無形なものが、単なる物質の集合体でない人間の生きた証、存在意義を示すものなのだと思う。

「トラックのくるまんとおじいちゃん」その2

本書でいえば、おじいちゃんトラックの部品が形を変えて残ったことよりも、「すてられはしない。へんしんするんじゃ。」と語ったときの笑顔が、くるまんの心に残ったことが、おじいちゃんの生きた証なんだろう。

吉永なおゆき・さおり夫妻
吉永なおゆき・さおり夫妻

作者の吉永なおゆき、吉永さおりご夫妻は、長野在住の夫婦絵本ユニットだ。自然あふれる田舎でシンプルな生活を送りながら絵本作家として活躍中。本書の前に上梓した最初の絵本「あなたはたいせつなたからもの」(よしなが なおゆき・文、ららひな・絵、主婦の友社)は、インターネットと口コミだけで世界中に広まり7000部を突破した絵本だそうだ。私は読んだことがないのだけれど、本書のようなシンプルなストーリーで、親から子への愛のメッセージ、日常の家庭の幸せがさりげなく書かれているという[1]。

厚生労働省の後期高齢者医療制度が総スカンをくらっているが、「姥捨て山ではない。これからはスマートエイジング(※2)じゃ。」とおじいちゃん、おばあちゃんがポジティブにいえる医療制度にはならないものであろうか。

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(※1)
iPS細胞 (induced pluripotent stem cells、人工多能性幹細胞、もしくは誘導多能性幹細胞)とは、体細胞(主に線維芽細胞)へ数種類の転写因子(遺伝子)を導入することにより、ES細胞(胚性幹細胞)に似た分化万能性(pluripotency)を持たせた細胞のこと。分化万能性を持った細胞は理論上、体を構成するすべての組織や臓器に分化誘導することが可能であり、ヒトの患者自身からiPS細胞を樹立する技術が確立されれば、免疫拒絶の無い移植用組織や臓器の作製が可能になると期待されている[2]。と、この引用だけでは何のことやら門外漢にはよくわかりませんな。


(※2)
あのDS脳トレの開発者、東北大学教授の川島隆太氏は、「アンチエイジング」という言葉に対して、年をとることは悪ではない、よりよく年をとること、高齢者にはポジティブな生き方をしてもらうという意味で「スマートエイジング」の概念を提唱している[3]。人生の折り返し点を過ぎた私も同感。


あなたはたいせつなたからものあなたはたいせつなたからもの
(2005/08/01)
よしなが なおゆきららひな

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[参考・引用]
[1]絵本作家 吉永なおゆき さおり、自然に関する仕事の現場、自然ねっと、
http://www.shizen-net.com/job/modules/td_hito1/index.php?id=4
[2]人工多能性幹細胞、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E5%A4%9A%E8%83%BD%E6%80%A7%E5%B9%B9%E7%B4%B0%E8%83%9E
[3]スマートエイジングへ学習療法を、加地アナの感度リョーコー、
http://www.tvq.co.jp/ana/kaji/2007/11/post_275.html
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